2006年当時、神奈川県内の公立中学校に通う2年生だったヒロシさん(31・仮名)は、いまだに、当時受けていたイジメの後遺症に苦しんでいる。
同級生たちから暴行を受けたときの悪夢にうなされる、受けたイジメがフラッシュバックして感情を抑えられなくなるなどの症状が今も続き、精神科では「心的外傷後ストレス障害」と診断されている。
同級生によるイジメに加えて、ヒロシさんを苦しめたのは、学校の対応だったという。イジメが最も苛烈だった中学2年生の時に担任の教師に訴えでたもののほぼ相手にされず、クラス替えを経た中学3年のときも担任の教師から受けた不適切と思われる指導で心に傷を受けた。
担任は『そんなだからいじめられるんだぞ』『笑え』
「中3で新しいクラスになって、新しい担任が僕にかけた第一声が『落ち着け、落ち着け』だったんです。なんでいきなりそんなことを言うんだろう、と妙な気分でした。この頃から目をつけられていたのでしょう。でもいま思えば、中2の時の暴行事件などの情報が、『一人で興奮している』とだけ共有され、歪んだ形で引き継がれていたのだと思います」(ヒロシさん)
中学2年生の3学期にヒロシさんが受け取った通知表には「ちょっとしたすれ違いが大きなトラブルに発展することの多かった後期でした」という担任による記述がある。イジメや暴行事件には触れられていない。
受験を控えた大事な3年生の1年間は、担任の第一声によって不穏な気配で始まることになる。そして、新学年が始まって間もない4月、さっそく問題が起きた。
「教室で掃除をしても、たまたま手が止まるときってあるじゃないですか。その瞬間を見つけた担任がニヤニヤしながら、『それだから(同級生に「手が止まってる」と)言われるんだよ』と言ったんです。中2のとき、暴行があったことは知らなかったんだと思いますが、担任が僕のことをターゲットにしていることを感じました。常に、表情がニヤニヤしていた」(同)
その後も、担任の教師はヒロシさんのことを他の生徒の前で“注意”しつづけた。
「『お前、集団でうまくやっていけなかっただろう』、『そんなだからイジメられるんだぞ』『笑え』と言われていました。『毎日、鏡を見て笑う練習をしろ』とも言われていたので、逆に教室内では意地でも笑うものかと思っていました。そうしたらだんだん笑う感情が死んでいって、家でも笑顔は減っていると母親に言われるようになりました。担任の『笑え』はしつこくて、卒業式まで続きましたね」(同)