以前は、休みの日には疲労のために何もできなかった。
「下北沢時代の一日の売上は5~10万円くらい。いい時で10~20万円。でも、ランニングコストがかかるので、どんどん経費分が出ていってしまう。手元に残るのは20パーセントか、30パーセントか。だから、下北沢で店をやっている時は焦りのほうが大きかったかもしれない。『これからどうなるんだろう』と」
飲食業に携わってからの米野はプレーヤーであり、マネジャーでもあったが、現在は立ち位置が変わった。
「今、基本的に自分は現場に入らず、アルバイトスタッフに頑張ってもらっています。自分でやったほうが早いと思う時もあるんですけど、やってもらわないと成長しないので、任せられるところは任せています。
そこが、スタジアムの店をオープンさせてから、一番変わったところですね。働く人のパフォーマンスをどうやって上げるかを考えています。役割としては、人材育成の部分が大きいかもしれないですね」
自分で魚を釣るのか、釣り方を教えるのか。どちらにも、違った大変さがある。
「もちろん、難しさもありますが、面白さも感じています。スタッフのひとりはスタジアムとは別のところでも仕事をしています。ほかには大学生がいたり、主婦の人がいたり。それぞれに働く意味も、目的も違う。この仕事が楽しいという人も、ここでの経験をほかで生かしたいという人もいます。
スタッフには野球好きな人が多くて、活気のある場所で働けることに喜びを感じてくれています。だから、僕はものすごく助けられています。どうしてもフードロスが 出てしまうので、そういうことも今後は勉強しないといけないですね」
球場でファンから声をかけられることも
かつての職場であったスタジアムに店をオープンして、初めて感じることもあった。
「僕にとって野球場は特別な場所です。ライオンズの選手たちは後輩にあたりますけど、みんなが頑張っているところを見ることができて、励みにもなります。
現役時代、観客席から野球を見ることはありませんでした。ファンの人たちはこんなリアクションをしているのか、こんな感じで声援を送っているのかと、新しい発見がありました。ファン目線で野球を見られるようになりました。
ファンあってのプロ野球。言葉では知っていましたが、改めて、今、そう感じています。プロ野球は、見にきてくれるファンの人がいないと成り立たない。ファンの方に『米野さんですか』と声をかけられることが多くて、本当に、ありがたいと感じています」