1ページ目から読む
3/3ページ目

『きんぎょ注意報!』からの『セーラームーン』に反発

―― 5歳の頃からダンスを始めたそうですが、自分からやりたいと言ったんですか?

竹中 そうですね。幼稚園の年中さんの時に学芸発表会をやったんです。女の子は劇かダンスを選べて、ダンスを選んで。それでカスタネット叩きながらカルメンみたいなやつをやったんです。それで、立ち位置を決めるってなった時に、背の高い子が中央にくるみたいな形だったんです。私、小さかったので、すごく端。でも努力すれば、きっとセンターになれるって思って、めちゃくちゃ頑張った。そのときの写真見るとすごいんですよ。もう指先まで意識が行き届いていて、ピーンって(笑)。でも、結局フォーメーションは変わらなかった。それを見た母が、バレエやったら? って、モダンバレエ教室に通わせてくれたんです。

―― 児童劇団にも入られたんですよね?

ADVERTISEMENT

竹中 それは小学校2年生からです。そこで『セーラームーン』のCMに一度応募したんですが落ちて。リベンジのつもりでよく内容を確認しないままセーラームーン案件のオーディションをまた受けてみたらなんとミュージカルでした。

―― セーラームーンっ子だったんですね! アニメは、リアルタイムで見てたんですか?

竹中 リアルタイムです。無印(『美少女戦士セーラームーン』)から『R』くらいまでですね。『(セーラー)スターズ』はもう中学生ぐらいになってたから、離れてましたけど。

 

―― 土曜日の夜7時からの放送でしたよね。

竹中 『セーラームーン』は『きんぎょ注意報!』の後番組だったんです。『きんぎょ注意報!』の絵柄は頭身がギュッて短くて可愛くて、チラシの裏いっぱいに「ぎょぴちゃん」を何匹も描いちゃうくらい好きだった(笑)。その土曜夜7時に、いきなり12頭身かっ! ていうセーラームーンがポーンって。最初は「はぁっ?」と思いましたよ。「絶対観ない!」って言ってたんですけど、いつのまにかズブズブにハマってました。

―― どこに惹かれたんですか。

竹中 私の中の変身願望と、ある日突然境遇が変わっちゃう世界への憧れとか、共感とかなんでしょうね。

生意気そうだったから、オーディションに受かった

―― 自分がいざ、ちびうさになった時には、どうでしたか。

竹中 私は、美奈子(ヴィーナス)がすごい好きだったので、「ちびうさかぁ」みたいな気持ちはありました。あんまりピンク色も好きじゃなかったし。オーディションの時、私は40度の高熱を出してて、みんなレオタードとか着てるのに、私だけフリースとGパンとキャップみたいな感じで、声もガラガラ。普通だったら落ちてるんですけど、うさぎ役の大山アンザさんがなぜか私を激推ししてくれて受かったらしくて。その理由がつい一昨年、判明しました(笑)。

―― ええっ、そうなんですか。

竹中 生意気そうなのがよかったらしいです。考えて見ると、ちびうさって境遇があの時の私とめちゃくちゃ似てるんです。親元離れてひとりで現世に来る。でも誰にも甘えられないから、みんなに生意気なことを言ってあたり散らす。後におばあちゃんの家のお風呂で、柿の種ばっかり食べちゃうような私の内なる孤独を、アンザさんは見抜いてたんでしょうね。

振付:竹中夏海 PASSPO☆「すてんだっぷガールズ! ~第1話 ダメダメ怪獣にご用心~」

「貞子」の木村多江ちゃんと『セーラームーン』で共演した

―― この舞台では木村多江さん(フィッシュ・アイ役)とも共演されてますね。

竹中 わりとイケイケなお姉さんが多かった中で多江ちゃんは落ち着いていて、めちゃくちゃ優しかったです。うちの母も多江ちゃんが大好きで、年賀状のやり取りもずっとしてたんです。最初、注目されたのが『リング』の貞子役でしたよね。顔もほとんど映らないような役からだったけど、徐々にテレビの仕事が増えてきて、ある年の年賀状には「舞台が好きだから、ちょっと戸惑ってる」みたいなことが書いてありました。「華々しく見えるけど、葛藤があるんだね」って母と話してたんですけど、それを乗り越えて大成されましたよね。

 

―― 子役として舞台に立っていた竹中さんは今、ステージに立つアイドルにダンスを教える立場になっています。教えながら、昔の自分を思い出しませんか?

竹中 私はホントにプロ意識のない素人丸出しの子どもだったから、そういう子を見つけると、自分を思い出しつつ甘くなっちゃうんですよ(笑)。もちろん頑張ってる子は偉いけど、素の自分というか、素人っぽい感覚をずっと持ちあわせてる子って、逆に健康的だなと思う。なんかいいじゃん、かわいいじゃんって。しかもアイドルって難しくて、その子のダメなところも個性になったりするじゃないですか。だから、ずっとヘラヘラしてる子とかを全肯定しちゃう。まさにそれが「推し」の感覚なんですけど、これはもうしょうがないですね。愛そのものだから。

 

#2 振付師・竹中夏海が語る「アイドルに大切なことはすべて嵐に学んだ」
http://bunshun.jp/articles/-/6673

#3 アイドル振付師・竹中夏海も絶賛 Perfumeのダンスが「すごい」理由
http://bunshun.jp/articles/-/6676

写真=鈴木七絵/文藝春秋

たけなか・なつみ/1984年生まれ、埼玉県出身。2007年、日本女子体育大学舞踊学専攻卒業。HKT48、NGT48などの大型グループからPASSPO☆、アップアップガールズ(仮)などの実力派ライブアイドルまで、担当したアイドルは300人にも及ぶ。ほかにも藤井隆やヒム子(バナナマン 日村勇紀)、スーパーJ POPユニット・ONIGAWARAなど、性別や年齢を問わずアーティストの“アイドル性”を引き出すことに定評がある。
自身のアイドル愛に溢れる視点を生かし、数々のアイドルダンス連載を持ち、「ラストアイドル」(テレビ朝日)の審査員も務めている。著書に『IDOL DANCE!!!〜歌って踊るカワイイ女の子がいる限り、世界は楽しい〜』などがある。公私共にアイドルに特化したコレオグラファー。