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「もう絶対にぶれない。どんなに批判されても、ぶれなければ何とかなる」(朝日新聞10月24日)

 やはり自覚はあったのだ。政権発足当初から「ブレることにブレない」首相だった。政策や決定を出して世論に不評だと、あとから“軌道修正”するというスタイルをとっていた。たとえばコロナウイルスの水際対策や18歳以下への10万円相当の給付などいろいろあった。

 そして今回は『首相 突然「所得減税」』(毎日新聞10月21日)である。

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「増税メガネ」を気にしている?

 このアピールには《首相がネット上で「増税メガネ」とやゆされているのを気にしていることが背景にあるとされ、遠藤利明前総務会長が減税に走る首相に「少し過剰に反応している」と懸念を示すほどだった。》(毎日新聞10月27日)

 ポイントは、今年6月末に受け取った政府税制調査会(首相の諮問機関)の答申だった。答申は個人所得のうち非課税となっているものについて「注意深く検討する必要がある」と指摘し、現在は非課税となっている所得として通勤手当や失業給付、遺族年金などを列挙。これがネット等で「サラリーマン増税」と批判された。対して首相側は「レッテル貼りはアンフェアだ」と反発しているという記事もあった(毎日新聞8月2日)。

 ただ、増税と言われる理由のひとつは防衛費増額や異次元の少子化対策の財源が不透明という理由もあるからだろう。議論が先送りされるなかで疑心暗鬼を生じた人が続出し、不支持率が高くなった理由も想像できるのだ。

自民党内からのツッコミも

 さらに、岸田首相に対する“異変”の二つ目。それは自民党内からもツッコまれていることだ。「何をやりたいのかわからない」「迷走している」というコメントが各紙で確認できる。最も興味深かったのは「週刊文春」最新号(10月26日発売)での石破茂氏の発言である。首相の減税策について石破氏は次のように述べている。

石破茂 ©JMPA

《ここ数年でお金持ちになった人がたくさんいて、収入が増えた大企業がたくさんあるんだよ。当然、政府の税収は絶好調なわけですよ。それなら、それを防衛費や少子化対策に当てればいいわけだ。なのに今回、それを国民に還元して防衛費とかはまた増税して賄おうとしているんだよね。世の中の人は不思議に思っているわけですよ。どこまでも場当たり的で、根拠がないんです。》

 さらに、

《国民に所得減税が必要な理由をきちんと説明できないと、自分のことしか考えていないと思われて足元を見られてしまうよ。》