ドローンが従来兵器の能力を高めた訳だが、こうした元からある戦力を飛躍的に高める要素としてのドローンは、軍事関係者の間で以前から「戦力増強装置」と呼ばれていた。報道等ではどうしても「ドローンが◯◯を破壊!」といったものが目立つが、ドローンの軍事的有用性は戦力増強装置として語られることも多い。
しかし、ドローンが火砲の能力を高める一方で、ドローン自体が火砲の脅威ともなっている。元々、ドローンによる攻撃はロシア・ウクライナ共に行っていたが、10月16日にウクライナのミハイロ・フェドロフ副首相兼デジタル変革相は自身のX(旧Twitter)アカウントで、ウクライナのドローン軍により1週間でロシア軍の牽引砲101門を破壊・損傷を与えた事を報告した。
ウクライナ側の主張であるので割り引く必要はあるが、この時期はウクライナ東部のアウディーイウカを巡る攻防が激化しており、ロシア軍が大量の損失を出したことが確認されている。
最近はロシア軍の火力も息切れを始めているとの見方も
ドローンによる対砲兵攻撃では、機動力のない牽引砲(移動に車両の牽引が必要な火砲)が両軍で多く犠牲になっている。先進国では安価な牽引砲から高価だが生存性の高い自走式の火砲への転換が進んでいるが、あるもので戦わざるを得ない両軍は、今後も損害を承知で対策を模索しつつ牽引砲を使っていくのだろう。
また、最近はロシア軍の火力も息切れを始めているとの見方もある。秋に入り、ロシア軍の火砲に交換用の砲身が不足しているとの分析が出ている。一般的に榴弾砲の砲身は数千発の射撃で交換が必要で、長引く砲撃戦により交換用の砲身が不足しているとの見方だ。
一方でウクライナ軍も供与M777が激しい射撃で消耗していると伝えられている。
昔から戦争の帰趨は火力で決まるとされているが、21世紀の戦争でもこのセオリー通りに進むだろうか。今後の戦争を見通す上でも、火砲の動きに注目したい。