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“完璧主義者”にメンバーは大変

 体の中で音楽と魂がミックスし、暴発寸前になっているかようなパフォーマンス、圧倒的な音域の広さと歌唱力を持つ宮本浩次は、いわずもがな天才である。

 加えて凄まじい努力をする、自らにも厳しい完璧主義者。このうえなくすばらしいのだが、仲間にも目指すものがハイレベルどころか、ハイハイハイレベルくらいのものになり、バンドメンバーは大変である。

©文藝春秋

 2004年にアルバム『扉』の制作過程約3ヶ月間に密着したドキュメンタリー映画『エレファントカシマシ ドキュメンタリーフィルム 「扉の向こう」』では、宮本浩次の厳しいにもほどがある指示が飛び交う中、ひたすら静かに受け入れる3人の様子が映し出されている。まさにコテンパン。観ているこちらまで「すいません……」と謝りたくなるような迫力だ。

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 それから10年近く経った2013年、25周年を迎えた彼らに迫るドキュメンタリー『劇場版エレファントカシマシ(ディレクターズカット)』も、そのコントラストは相変わらず。

『劇場版エレファントカシマシ(ディレクターズカット)』DVDには石森、高緑、冨永3人それぞれのインタビューも収録されているが、恐ろしいほどに静かなテンション。ドラムのトミ(冨永義之)に至っては、言葉を発するより考える時間が断然長く、背中をさすってあげたいほど疲弊していた。

 努力家の天才、ミヤジから出る才能の突風。誰が音を上げ、脱落してもおかしくない状態だったが、結局35年、誰も辞めなかった。しかも彼のスパルタに音が委縮することなく、確実に太く強いサウンドは膨らみ続け、ファンを増やし、今に至る。

 高緑成治が静かに語っていた、「熱量って本当に大切ですよね。詞に対して、音の表現というのがすごく繊細で、デモテープを聴いているとわかるというか、そのへんまで考えてやらないと、表現しきれないというか。(中略)熱量って体力じゃないじゃないですか」という言葉が、何かを掴み取ろうとする覚悟に思え、とても印象的だった。

 天才を支える胆力を持つ3人もまた、間違いなく、すさまじい才能の持ち主なのである。