浜崎あゆみがデビュー25周年を迎え、現在は自身初となる47都道府県ツアーの真っ最中だ。体調不良の悪化で兵庫・京都公演が延期されたが、10月14日の岡山公演から復帰。その直前、10月5日に放送された「MUSIC SPECIAL 浜崎あゆみ ~ayu 25年の軌跡~」(NHK総合)は見ごたえがあった。
45歳とは思えない伸びやかさ
私は、2015年に放送された「SONGS」以来、8年ぶりに実現したというロングインタビュー目当てでチャンネルを合わせたが、なにより驚いたのはステージだった。
歌のパワーがすごい! もともと上手な人だと思っていたが、とても自然になっていた。数年前に何かのテレビ番組で聴いたときは、苦しそうで歌い方も変わっていて、少々ガッカリした覚えがある。ところが今回はパワフルで高音も素晴らしく、45歳とは思えない伸びやかさがあった。
すごいな……! 前のめりになって聴いた。
この放送で1曲目に歌ったのは、ブレイクのきっかけとなった1999年の楽曲「A Song for xx」(作詞:浜崎あゆみ、作曲:星野靖彦)。ダンサーたちに囲まれ、マイクスタンドを激しく振り回しながら歌う姿は、リリース時とは違った感傷を覚えた。心細さよりも、孤独への憤りと覚悟。
歌は生き物。歌い続けるごとに、深みと意味を変えながら伝わってくるものだと思った。
「居場所がなかった 見つからなかった」
この曲は、1999年1月1日に発売されたファーストアルバム『A Song for xx』の表題曲だ。1999年はうんざりする不況が続き、新時代へのぼんやりした不安と希望が混ざっていた時代。力をなくしていく大人たちを尻目に、怖いものなど、なにもないかのように日常を楽しんでいるように見えた女の子たちがいた。
けれどみんな必死で楽しむふりをしながら、大人以上に不安だったのだ。そんな時、数多のCDショップで響いた、
居場所がなかった
見つからなかった
このサビ。甘ったるいけれど、切実さを感じる高い声が、1999年当時、ギラギラ強い光を炸裂させていたギャルたちの影とリンクした。
居場所がなかった 見つからなかった――。改めて読んでも、本当に、なんのひねりもない言葉である。しかし、当時はそれすら思い出せなくなるような喧噪に包まれていた。
それを、彗星のように現れた「ayu」が言葉にしたのである。