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「自分を救ってくれた」意外な“あの曲”

 NHKのインタビューでもう一つ印象的だったのが、浜崎あゆみが「自分を救ってくれた曲」として、宇多田ヒカルの「Movin′on without you」を挙げたことだ。

宇多田ヒカル ©getty

 彼女がこの歌をカバーしたのは2014年。宇多田ヒカルの歌を著名アーティストがカバーした『宇多田ヒカルのうた 13組の音楽家による13の解釈について』で歌っている。私はラジオで聴いた、熱帯モードの「SAKURAドロップス」(井上陽水with オルケスタ・デ・ラ・ルス)に驚きアルバムを購入した。まさに名盤だったのだが、あゆの歌う「Movin′on without you」の明るい疾走感は特に新鮮で心地よく、「浜崎あゆみはやっぱり歌がうまい人なんだな」と思わぬ相性の良さに胸が躍ったものである。

 2000年代、激戦区だった「歌姫」戦線のなかでも、とびぬけたCD売り上げ枚数を誇っていた浜崎あゆみと宇多田ヒカル。2001年3月28日に浜崎あゆみの『A BEST』と宇多田ヒカルの『Distance』が同日発売になったときは「歌姫頂上決戦」と騒がれた。

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宇多田ヒカルに軍配が上がったが…

 結果的に、売り上げは初日の3月28日だけで、宇多田ヒカルの『Distance』が約163万枚、浜崎あゆみの『A BEST』は約161万枚(CDJournal WEBより)。重ねて書くが、たった1日の売り上げである。この枚数のすごさよ……。

 宇多田に軍配が上がったものの、結果が出てみれば、どちらが上というのではなく「どっちもすごい」と感じた人が多かったのではないか。ただただ、時代を牽引するガールズパワーの凄さを世に知らしめた、そんな頂上決戦だった。

ヒョウ柄の携帯電話を浜崎あゆみ自らデザインした「TU-KA A MODEL」発表会

 互いのチームもリスペクトしあっていたようで、宇多田のカバーアルバム参加のいきさつについて、avex公式サイトに、ゼネラルマネージャー米田英智氏のインタビューが掲載されている。

「最初にオファーをいただいた時、井上陽水さんや椎名林檎さん等、他にもすごいメンツで。宇多田ヒカルさんチームのディレクターに『なぜ浜崎にオファーして下さったんですか?』と聞いたら、『(宇多田と)同じ時代を駆け抜けてきた同志であり、音楽家としての浜崎さんをリスペクトしています。だから参加して欲しい』と言って頂いてすごく感激して、これは絶対受けなければダメだと思いました。ただその分、プレッシャーはハンパなかったですが(笑)」(2018年8月14日公開「チーム浜崎あゆみ。常に前代未聞をつくりだすDNA」)

 このアルバムのリリース時、宇多田ヒカルは「普通に生活して大人になりたい」と「人間活動」の宣言をし、2011年から活動休止中だった。