「岸田政権が続くことが目的じゃなくて、続くことが我が国にとっていいことだと思っているので、支えていかなければいけないと思っています」

 自民党岸田派のナンバー2・林芳正前外相はこのように、岸田総理の下で長期政権を目指す考えを強調した。自らも総理大臣の座を狙いながら、苦境にあえぐ岸田総理をどのように支えていくのか。林氏は10月31日、文藝春秋ウェビナーの「青山和弘の永田町未来café」に出演し、その苦悩と外相退任後のビジョンを語った。

(左から)林芳正氏、横江久美氏、青山和弘氏 ©文藝春秋

解散した時に国民がどう思うか考えないと

 長期政権を目指す岸田総理だが、内閣支持率は軒並み発足以来最低を記録し、政権運営は極めて厳しい状況に陥っている。この状況を招いた要因の一つに、岸田総理が打ち出した所得税減税がある。林氏は減税という経済対策に一定の理解を示す一方で、打ち出すタイミングについては、もっと戦略的に考えるべきだったとの認識を示した。

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「そういう(選挙が近くて支持率が下がっている)状況の中で、この(所得税減税の)メッセージを出すとどう受け止められるか。周りの人も含めて戦略的に広報ができるよう改善する余地はあるかもしれません」

 一方、自民党内では岸田総理が依然として年内の解散総選挙を模索しているという見方がある。この年内解散について林氏は、「やろうと思えば総理の一存で決まる」としつつも、慎重な姿勢を滲ませた。

「結局、解散したときに国民がどう思うか。解散の大義とよく言われますが、国民がおかしいなと思えば、やった方に跳ね返ってくる。それは負ける可能性が増えるということだから、しっかり考えていかなきゃいけない」

林氏 ©文藝春秋

外相退任は「レギュラーの人事」

 9月の内閣改造で外務大臣を退任した林氏。続投が既定路線だと見られていたため、退任の理由については様々憶測が飛んだ。ところが林氏は「驚きではなかった」と強調した。

「意外だったし嬉しかったのは、いろんな人から『何で(外相を)辞めるんだ』とずいぶん言われたこと。それはいい仕事をしていたからだと勝手に思い上がっていますが、何かおかしなことが起きた的な言われ方をするとちょっと違うんじゃないでしょうかと。レギュラーの人事と見てもらった方がいいと思います。総理からは『閥務を少しやってもらえないだろうか』と話があったんですが、いろんなことを考えられて、私も『その通りだな』と思って今回の人事となったんです」

 確かに岸田総理は、総理派閥でありながら第四派閥に甘んじている岸田派の現状を心許なく感じているようだ。ただ林氏に「閥務」を任せるのが外相交代の理由ならば、かねてから批判がある総理大臣と派閥会長の兼務をやめて、林氏に会長を譲るべきではないだろうか。筆者が「岸田総理は総理大臣を目指している林氏に派閥を乗っ取られるのが怖いのではないか」と質すと、林氏は言下に否定した。

「それはないと思いますけども、岸田総理が派閥に思い入れが強いのは当然だと思います。名目的に派閥の会長を(自分に)動かすことは、必ずしも必要ではないです」