ーー10%ですか。
叶井 で、「その10%に賭けたらどうなるの?」と聞いたら、4カ月から半年は入院して抗がん剤。で、仕事はベッドの上でできることのみ。でもさ、抗がん剤で動けなくなるから、パソコンとスマホなんかいじれないよ。俺、ヨタヨタしたくないから。テキパキしたいの。パパパパッパパッて。
俺、8カ所病院行ったけど、どの医者も同じこと言ってた。
ーー8カ所も。
叶井 セカンド・オピニオンどころじゃないよ、エイト・オピニオン。東京医療センター、がん研有明、三田病院、三田病院はすい臓がんの権威がいるんだけど、その先生にも同じこと言われたから。あとは免疫病院とかに行ったね。
近藤誠先生のところも行ったよ。先生がまだ生きてるとき。
ーー近藤先生は、なんと?
叶井 「絶対抗がん剤やるな」って。それで3万円取られた。
あとはいろいろとCTのデータを見て、「あー、これは長く生きられないな」みたいなことも言ってた。
現在続けている治療は「NKT細胞治療」と「高濃度ビタミンC」
ーー標準治療を受けないことに対して、妻である倉田さんは?
叶井 向こうも「やめたほうがいいんじゃない?」って。
ーー免疫治療はやってるんですよね。
叶井 なんとなく続けてるよ。会社の社長が免疫治療をやってるとこを紹介してくれて、まわりからも「やれ」って言われて。
NKT細胞治療っていうやつで、自分の血を1Lくらい抜いて、免疫培養してまた戻すの。1回、数百万円するけど、倉田さんが出してくれる。
もうひとつ、2週間に1回とか月に1回のペースで高濃度ビタミンC点滴ってのもやってる。2時間ぐらいかけて、700mlぐらい打つ。それは家でやるから、倉田さんが打ってくれてるよ。これは、1回に3万円から5万円。
NKTも高濃度ビタミンCも、効いてるのか効いてないのかわかんないけどね。
死ぬならがんじゃなくて心筋梗塞がいい
ーー叶井さんのお父さん、早くに亡くなってましたよね。
叶井 親父は、もう50代か、60代で死んでるんじゃない? 母さんは、74か75で健在。
ーー身内にがんの方もいたのでしょうか。
叶井 母方のばあちゃんは、すい臓がんだった。がん家系かはわからないけど、俺は3年前に心筋梗塞をやってるんだよね。
心筋梗塞って一生飲まなきゃいけない薬があるんだけど、最近もう飲むのやめたんだよ。心臓で死んだほうがいいかなと思って。心臓だと、あっという間に死ねるじゃん。そのままバタッと死ねるから。心筋梗塞の先生に「俺、死ぬならがんじゃなくてこれがいいんだけど」って言ったら、先生も「自分もそう思います」って言ってたよ。
ーーそれって、ある種の自殺でもありますね。
叶井 マジで首吊って自殺しようとしたよ。9月に胃を切って入院してるときに。
写真=末永裕樹/文藝春秋