これを初めて知った人は、大変おどろくと思います。私もそうでした。私は、ムスリマになる前は音楽が大好きで、「自分の人生は音楽だ!」「音楽以外は何もない!」と思っていたほど、音楽にどっぷり浸かっていた人間でした。
音楽が人を酔わす、人をまちがった方向へ持っていくとは、微塵も思っていなかったのです。
でも、知ってから気づきました。当時の私が、まさにそれだったと。
イスラムでは、酔わせるものは禁止なので、人や国によってちがいますが、飲酒やギャンブルも原則できません。
そして音楽は、お酒やギャンブルのように、人の脳を酔わせることができます。
極端な例ですが、音楽であまりに熱狂しすぎて、失神した人や亡くなった人もいます。逆に、悲しいときに音楽を聞いて勇気づけられた、はげまされたということもありますよね。「この音楽があったおかげで、自分は気分が変わった! 心が軽くなった!」という人もいるでしょう。
このように音楽は、お酒のように人を酔わせることができてしまうのです。
音楽を聞いているときはお酒を飲んでいるときと同じように、本人が意図しない考えや行動へと、誘導されてしまうおそれがあるのです。
イスラムが音楽を流すとき
ちなみにイスラムでは、音楽を流してもいいときがあります。
たとえば、結婚式などのお祝いのときにタイコを叩いたり歌を歌ったりするのは、楽しむ上でいいのです。
また、音楽をまったく聞かず生活にも入ってこさせないムスリムがいる一方で、たまには聞くというムスリムもいますし、よく聞くムスリムもいます。人それぞれなので、音楽の授業を受けている子だっているでしょう。
最後に、誤解してほしくないので念をおさせてください。
図工をやらない、音楽も聞かないムスリムの子であっても、決して図工や音楽の授業に反対しているわけでもないし、ましてや「そんな授業は廃止しろ」と思っているわけではありません。
ここはイスラムの国々ではなく、日本なのですから。日本にいるムスリムたちは、ちゃんと日本について理解している、ということをわすれないでください。