韓国社会の「万病のもと」となってしまった教育問題
このような私教育が主導の受験は、韓国社会の「万病のもと」となっており、韓国では「百薬が無効」――もはや打つ手がないのだと言われている。韓国の歴代政権は私教育の抑制のためにさまざまな大学入試制度改善策を発表してきたが、私教育機関はその度に素早く対応し、制度が変わる混乱に乗じて教育費はむしろ増えている。
そんな現在の状況が「公正ではない」と見かねたユン大統領は、キラー問題を「数十万人の受験生を対象にした不適切で不公正な問題」と批判した。6月26日、教育部(日本の文部科学省の旧文部省部門に相当する国家行政機関)はキラー問題に対する具体的な定義と過去の例を明らかにし、「公正な修能のために今年からキラー問題の出題を排除する」と発表した。キラー問題によって加速した私教育主義と、親たちの過度な経済負担という悪循環を確実に断ち切るということが狙いだ。
ただ、修能まで5ヶ月を切った状況で、問題のスタイルが突然変わることに対して、多くの生徒と保護者は少なからず当惑している。教育の専門家たちも、「キラー問題の排除で上位圏の受験生に対する弁別力(難問を出して差をつけること)が落ち、入試に大きな混乱をもたらすだろう」と憂慮した。
専門家はキラー問題の排除を評価
そして、9月の模擬試験ではキラー問題が排除され、すべての問題が学校教科課程の中で出題された。これに対して、“修能専門家”とも言えるイルタ講師たちは、「キラー問題が外されたが、弁別力が維持された」という肯定的な見方をしている。
受験生の間でアイドル並みの人気を持つ数学のイルタ講師であるヒョン・ウジン氏は、「数学の難易度が低くなった」としながらも、「修能の変化には拍手を送りたい。子どもたちの勉強はこれが適切ではないか。韓国のように(子どもに)勉強ばかりさせる国がどこにあるのか。肯定的なシグナルを与えているだろう」と評価した。
だが、限界もあった。キラー問題を排除した模試では数学で満点者がなんと2520人も出て、直前の6月の模試より4倍も多かった。数学のキラー問題はこれまで大学合格基準点を大きく左右してきたため、受験生の入試戦略にも大きな変化が生じることとなった。