「イルタ講師」の平均年収は約11億円
韓国では、学校などの公共機関で行われる教育を「公教育」、塾や個人授業など民間教育機関で受ける教育を「私教育」と分類するが、韓国入試は私教育が主導している。ゆえに、塾が密集しているソウル・江南の大峙洞(テチドン)が「韓国教育の一丁目一番地」と呼ばれている。
現在、ソウルにある塾の数は約2万4000ヶ所余りで、コンビニ(約8500ヶ所)の3倍に達している。これは、ソウルにあるコーヒーショップの総数の約1万7000ヶ所余りより多い。イルタ講師の年収は平均100億ウォン(約11億円)を超えるというのが定説で、中でもトップのイルタ講師は年収が200~300億ウォン(約23億円~34億円)と推測される。
このような事情から、少子化で生徒数が急減しているにもかかわらず、子ども1人あたりにかける教育費はむしろ上がっている。韓国の統計庁の資料によると、2018年に約17兆ウォン規模だった小中高の私教育市場は、2020年に19.3兆ウォン、2022年には26兆ウォンまで膨らんだ。小中高の生徒のうちの78.3%が塾などの私教育を受けており、彼らが月に支払う費用は52万4000ウォン、私教育を受けない生徒まで含めた小中高生の私教育費の平均は毎月41万ウォンだ。
所得が高いほど教育費の支出額も増え、上位20%の高所得層は平均の3倍近く高い114万ウォンを毎月教育費として支出している。なお、成績上位10%の生徒の教育費は下位20%の生徒の約2.5倍。つまり、教育費の支出額が高い富裕層ほど成績が上がり、入試で絶対的に有利だという結論が出ている。
銀行にお金を借りてでも子どもの教育費に充てる韓国の親たち
「名門大学に進学するためには(良い塾と講師を捜し出す)母親の情報力と(高い教育費を払ってくれる)祖父の経済力、(余計な口出しをしない)父親の無関心が必須」という言葉が流行するほど、中産層でさえ教育費は家計の大きな負担になっている。韓国の平均的な夫婦の間では「子どもを2人以上持つ家庭は金持ち」という自嘲的な文句も出ている。
韓国の親たちはたとえお金がなくても、銀行にお金を借りてまで子どもの教育費に充てるため、自分の老後に対する対策はとても立てられない。そして必然的に老後には、「エデュプア」(Edu poor=教育貧困層)に転落してしまう。