少子高齢化が急速に進んでいる韓国。尹錫悦(ユン・ソンニョル)政権は、「年金」「労働」「教育」の「3大改革」を国家的課題とし、社会構造の改善を掲げている。このうち、「教育改革」は、過度な教育費が家計の大きな負担となっている現況から、少子化問題の解決策の一環としても受け入れられている。

2022年の大統領選では、0.7ポイント差で「薄氷の勝利」を収めた尹錫悦氏 ©️時事通信社

 ユン政権は今年6月、教育改革の出発点として、日本のセンター試験にあたる韓国の大学入学共通試験「大学修学能力試験」、通称・修能(スヌン)の改善を掲げた。塾など学校外の教育機関に依存しすぎているとして、学校での教育だけでも修能問題を解決できるようにするべく、「キラー問題」を排除する方針を宣言した。

「地球人には解けない」とまで言われる“キラー問題”

 キラー問題とは、上位圏の大学を受験する生徒たちに差をつけるための超高難度問題で、各試験科目当たり1~4問ずつ配置されている。配点が多いゆえに、この問題の出来次第で入学する大学が変わるという話があるほどだが、受験生からは「地球人には解けない問題」という声も出ている。

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 キラー問題の正解率は全受験生の10%未満が一般的で、昨年は正解率が2.5%の問題もあった。ただし、1994年に導入された修能が29年間も続き、ほとんどの問題の類型が見破られたという問題点と、学生の負担を軽減するために試験範囲が縮小する傾向を補完するためにやむを得ず登場した側面がある。

※写真はイメージ ©iStock.com

 このキラー問題は例外なく、学校で行う授業の教育課程の範囲外から出題される。そのため、韓国の塾ではキラー問題対策のため、少数精鋭の成績上位圏の生徒たちを対象とした、高価な特別進学コースを設けている。塾で独自に作った多様なキラー問題を受講生に出題し、問題を解く「スキル」を教えることが授業の骨子だ。

 韓国では試験科目別に受講生が最も多いスター講師を「一打(イルタ)講師」と呼ぶ。彼らが提出する予想問題が実際の修能で的中率が高いため、人気が集中するのだ。その中でもキラー問題をどれだけ多く的中させるかというのがイルタ講師の実力を判断する基準になる。結局、キラー問題を解けるようになるために、生徒たちは、学校での勉強以外にも、塾や個人レッスンに高いお金を払わなければならない。