GWに久しぶりに実家に帰ったら、親が突然「ネット右翼」になっていた——。

 これは現代において、決して珍しくない事例である。ネット上でヘイト行為を繰り返して逮捕・裁判に及んでしまう人のほとんどが、50歳以上の「シニア右翼」なのだ。

 ここでは、かつてチャンネル桜にレギュラー出演し、右翼と「同じ釜の飯を食っていた」という文筆家・評論家の古谷経衡さんが、右翼の実像を論じた『シニア右翼』から一部抜粋。「ネット右翼」とはどんな人々なのか、具体的なデータを元に分析する。(全2回の2回目/1回目を読む)

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「ネット右翼」とは何者か

 では、「ネット右翼」について説明する。ネット右翼とはネット上で右派的・右傾的発言をする人――、とかいつまんで言えばそうなるが、現代右翼の定義自体が異形なものになっているので、ネット上でそのような異形の主張をしている人、とすれば正しいのだろうか。

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 まずネット右翼には厳然たる上下関係がある。ネット右翼はそれ単独で体系的な右翼知識を持たないので、誰かの理屈に「乗っかる」ことになる。体系的な右翼知識があれば一君万民やアジア主義とはまったく異なる体の右翼にはなっていない。そう考えると、ネット右翼には彼らの主張を強力に後押しする存在が必要であった。

 概ねそれは「保守系言論人」とか「右派系言論人」などと言われる人々である。彼らは所謂保守系雑誌などで執筆したり、保守系ネット番組でコメンテーターをしたりする常連たちである。

 わが国の保守派は永らく『産経新聞』を頂点とし、同社出版の月刊誌『正論』を補助として「サンケイ・正論路線」などと呼ばれる勢力を築き上げてきた。このような「論客」が様々な媒体で発露する言説を、そのままネット上で「簡便な形で」オウム返しするのがネット右翼の実際における定義である。