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年収は平均500万円、自営業者・フリーランスが多い…韓国・中国にヘイトを向ける“ネット右翼”の意外な正体

『シニア右翼』より #2

2023/05/13

genre : ニュース, 社会

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 彼らはほとんどの場合で個人のSNS(ツイッター、Facebookなど)IDを持ち、そこでも短縮版として同じような言説を展開する。現在では彼らは個人でYouTubeチャンネルを開設している場合が少なくない。それらの動画を熱心に視聴し、その内容を無批判に受容・拡散するのがネット右翼である。

 よってネット右翼は数ある「保守系言論人」とか「右派系言論人」を必ずフォローし、拡散する傾向が極めて強い。彼らに捕捉される人々のフォロワー数は自然と膨大になる。所謂「大御所」クラスになると100万前後のフォロワーは珍しくなく、「大物」では50万~100万未満、中堅でも10万~40万、中堅下位でも数万~10万未満というところだ。

 つまり彼らネット右翼は「保守系言論人」とか「右派系言論人」の熱心なファンなのであり、と同時に熱心な消費者でもある。「保守系言論人」とか「右派系言論人」はこのような上位関係、ないしファンへの訴求という構造に依拠し、自著を販売したり、自分の知名度を上昇させる宣伝の一翼を担わせたりしている。

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「とりあえず買っておこう。そうすれば安心」

 彼らの熱心なファンであるネット右翼は、必ずしも彼らの書籍を読み込む必要はない。ファンだからこそ「取り急ぎ購入」して積読していたとしても、ファンである自尊心はむしろ物質的な購買を重視する傾向もあるので特に問題にはならない。

 前編で述べた、櫻井よしこの本を大量に購入しつつ、一冊も読んでいないH君の事例もこの典型といえるべきもので、ネット右翼は上位存在である「保守系言論人」とか「右派系言論人」の著作を大量に買う主力購買層を形成するが、実際に読んでいるとは限らない。

©AFLO

 なぜならそもそもネット右翼には読書習慣が薄く、その情報取得源のほとんどは動画だからである。どうりで私が右翼時代に幾ら本を書いて、幾ら雑誌に寄稿してもその手ごたえは糠に釘で、ほとんどすべてがネット動画の感想に終始していたのはこれが原因である。

「保守系言論人」とか「右派系言論人」が出す本が、出版実績的には概ね好調であっても、それは「ファン買い」の範疇であって購入者がその本を読んでいることとイコールではない。

 この構造は、まるで神社仏閣での護符とかお守りの購入と似ている。「とりあえず買っておこう。とりあえず持っておこう。そうすれば安心」という心理が強く働くのであり、それを咀嚼しているわけではない。神社仏閣でお守りを買う人は多いが、そのお守りの布を剥がして内部はどうなっているのかという点検を行う人は極めて少ないのと似ている。