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 例えばネット右翼の上位存在である「保守系言論人」とか「右派系言論人」が様々な媒体で「日本国憲法9条で国が亡ぶ」というと、それがそのまま下位存在であるネット右翼に伝播する。「韓国や中国にいつまで謝り続けるのか」と言えばそっくりそのままネット右翼がオウム返しする。

「『朝日新聞』はけしからん、廃刊にせよ」と言えばそのまま、仮に『朝日新聞』を読んでいなくてもその運動に呼応する。政党や政治家への支持も同じで「◎◎議員は愛国政治家なので支持します」と言えば、そのままネット右翼は支持を表明する。

「保守系言論人」とか「右派系言論人」が海中を遊弋(ゆうよく)する巨大なエイやクジラだとすれば、その胴体の下部に付き従う無数の小魚たちこそネット右翼なのである。

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 このように上位存在である「保守系言論人」とか「右派系言論人」が下位のネット右翼に向けて一方通行で言説を流し、それを無批判に受容して拡大再生産するのがネット右翼の最大の特徴である。繰り返すようにネット右翼は独自の理屈とか理論を持つに足りるだけの知識の蓄積を持たないので、上位の「保守系言論人」とか「右派系言論人」の言説に「寄生」するのである。宿主である彼らの主張をネットの中で瀰漫させる存在こそがネット右翼の実相的な定義になるのである。

ネット右翼の活動領域はネット空間だけではない

 むろん、ネット右翼が必ずしもネット空間だけに自閉する訳ではない。彼らの上位存在である「保守系言論人」とか「右派系言論人」が、リアルでの集会やイベント、勉強会を主宰するので、それに参加するという形で街頭に出る。

 ネット右翼の活動領域は必ずしもネット空間だけではない。それを以て「リアルでも活動しているから、私たちをネット右翼と呼ぶのは間違いだ」という反論があるが、ネット右翼とは上位存在の言説に寄生し、それをそのまま無批判に垂れ流す小魚たちなので、実態として街頭に出ようがリアルのイベントに参集しようが、その依存構造は全く変わらないから私はこれをネット右翼と呼んでいる。

 ネット右翼の上位存在である「保守系言論人」とか「右派系言論人」は、すでに述べた通り基本的には「サンケイ・正論路線」の人々であるが、現在において必ずしもそれだけではなく、『正論』の後発である月刊誌『WiLL』、同じく月刊誌『Hanada』、ネット動画では「DHCテレビ(2022年事実上の休止。現在は出演者による後継番組)」「文化人放送局」「日本文化チャンネル桜」などへの常連登場者とほぼ同義となる。

 ただしこれらの人々は「産経・正論」『WiLL』『Hanada』「DHCテレビ」の中で横断的に複数の媒体に登場する場合が多く、もはやほぼすべてが一体的な勢力であるという事もできる(――勿論この中でも相互に反目する派閥的色合いはあるが、詳述すると膨大になるので除く)。