1ページ目から読む
4/4ページ目

人とクマの接触が増えている背景

 今回の事故に先立つ9月8日朝には、福島町内のするめ加工場にヒグマが侵入してするめを食い漁り、約20万円相当のするめが廃棄されている。

 福島町では捕獲したクマの大腿骨、肝臓、臼歯を前出の道立総合研究機構に試料として提出し、個体の特定や食性の研究などに利用しているという。

 同機構エネルギー・環境・地質研究所の釣賀一二三自然環境部長が、「研究所に送られてくる試料は今年、例年より確実に多い」としながら、ヒグマの出没数が増えている理由についてこう語る。

ADVERTISEMENT

「1990年までは『春グマ駆除制度』でハンターが積極的にクマの生息域に入り駆除を行っていました。追われて生き永らえたクマは人への恐怖心や警戒感から近づかなくなり、かなり出没数が減っていた。また警戒感が薄いクマは捕獲されていました。人とクマの接触が増えている背景には、全道的にクマの分布が拡大していることが挙げられます」

誤った対応をすると、クマに食物と認識されてしまう

 ヒグマの食性については次のように説明する。

「農作物の被害は一貫して増えています。夏場は(飼料用の)デントコーンの被害が特に多い。食べ物への執着心という意味では養蜂場に強い執着を持っており、電気柵を設置しても穴を掘って侵入する被害が多く出ています。ただ、一般的にクマは人を食べない。ヒグマは本来、草食性の強い雑食性です。知床などではサケ、マスを食べますが、ごく一部だと考えられています。エゾシカも、死亡している個体を利用する(食べる)ことが多い。人の被害の場合、ばったり遭遇して背を向けて逃げるなど誤った対応をして、クマに捕獲されて食物と認識されてしまうなど、何かのきっかけがあるのではないかと考えています」

 

――一般的にヒグマが動物を捕獲したらどこから食べるのか。

「……まずは内臓からでしょうね。すっかり食べてしまう個体もある」

 ヒグマと人間、生物としての力の差は圧倒的だ。出没地域での安全確保が求められる。