その後、道警による司法解剖が行われ、DNA鑑定の結果、被害者は函館市内の大学生、屋名池奏人さん(22)と判明。10月29日に「登山に行く」といったまま、行方不明となっていた。31日に消防署員らがヒグマに遭遇する前に、すでに被害に遭っていたとみられており、道警はクマの死骸から胃を摘出し、内容物を調べている。
周辺で相次ぐ人的被害
地元猟友会関係者が語る。
「これまで登山者がクマを見たというのはあっても、人的被害はまずなかった。それが、人が襲われる事故が出てきたのがここ数年のことです。この夏は特に気温が高く日照り続きで、クマのエサである木の実が極端に少ない。田畑を食い荒らされる被害はよく出ていて、ウチも今年、畑のニンジンを全部やられた。それでもこれまでクマが出るのは、早朝や夜中などひと気のない時間帯でした」
別の猟友会関係者がこう明かす。
「今年は特にクマの出没数が多く、実は福島町内でも9月の1カ月間だけで、檻の形の『箱ワナ』で、普段の1年分くらいのクマの捕獲があった」
福島町役場によれば、今年度に入りすでに町内で16頭が捕獲されているという。
人を恐れぬクマの増加。周辺ではここ数年、人的被害が相次いでいた。
畑仕事に出たままクマの餌食になった事例も
福島町で最初にヒグマによる死亡事故が起きたのはおよそ2年前のことだ。今回の現場最寄りの国道を約10キロ南下した、海沿いの同町白符で起きた。2021年7月2日朝、国道から、津波などの際のために設けられている避難路を30mほど上がったところにある杉林内の、オオイタドリが生い茂った藪の中で、性別不明の人間の両脚が見つかったのだ。約20メートル先にはカボチャやジャガイモを植えた畑がある。遺体は傷だらけで、幅70センチ、深さ20センチほどに掘られた穴の中に、草の塊に覆われて隠されていたという。
その後の司法解剖で、被害者は前日朝に畑仕事に出たまま行方が分からなくなっていた近所の77歳の女性であることが判明。
「当時、担架で遺体が運ばれるのを見ていたが、シートの下にあるのは人間が寝ている形をしていなかった。この辺は冬場にはエゾシカが大量に出てくるから、それを獲物にしているクマではないか。クマは柔らかければ太腿の骨まできれいに食べちまうんだ」(近隣住民男性)