この作品がバズったのは、往年の大映ドラマや昼ドラを彷彿させる愛憎入り乱れたドロドロ展開が大きな要因なのですが、その要素を牽引していたのが田中さん演じる眼帯秘書・姫野礼香でした。
物語は、後にカリスマアーティストになるアユと敏腕プロデューサーであるマサのラブストーリーなのですが、マサの秘書で彼にストーカー的に執着して愛情をたびたび暴発させるのが礼香。
アユへの嫉妬心から手段を選ばずに妨害工作などをしてくるのですが、礼香の「許さなーーーーい」「約束いはーん(違反)!」などの常軌を逸した名セリフは多くの視聴者をザワつかせ、田中さんのその振りきった怪演が高く評価されたのです。
『あなたがしてくれなくても』の“修羅場”も
田中さんの演技が大きく注目を集めた作品は今年もありました。
4月期に放送されていたセックスレスとダブル不倫を扱ったドラマ『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)。ヒロインとその上司がお互いに夫婦間の夜の営みがないことをカミングアウトし合って絆を深めていき、いつしか禁断の恋に落ちていくというストーリー。
田中さんは2組のセックスレス夫婦の主要キャラ4人の一角を担っており、ヒロインに夫を奪われそうになる“サレ妻”新名楓を演じていました。
そもそもTBSの元女子アナが、自然とフジテレビのGP帯の連ドラの主要キャストに名を連ねているのがすごいと思うのですが、さらに彼女の演技はこの作品で一皮むけた感があったのです。
物語後半で夫の不倫を疑った楓が、ヒロインに「私とランチしません? ご馳走します」と語りかけ、直後に顔を近づけて「夫と浮気してますよね?」と無表情で問いかけるという展開がありました。
こうして迎えた地獄のランチ。テーブルを挟んで二人が座り、長い時間、無言で対峙した後、その重苦しい沈黙を破る楓。
『M 愛すべき人がいて』も観ていた視聴者なら、ここで罵詈雑言を浴びせたり、取っ組み合いや髪の掴み合いになったりするなど、田中さん演じる楓の大立ち回りが来ると思ったかもしれませんが、いい意味で予想は裏切られます。