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 楓は意外と冷静にヒロインを問い詰めていきました。“静と動”で言えば“静”の修羅場。『M』の礼香の再来を期待して、異常なほど荒ぶる楓を求めていた視聴者は、肩透かしを食った気持ちだったかもしれません。ですが“静”の修羅場シーンが用意されていたのは、『あなたがしてくれなくても』の制作陣が田中さんならこうした繊細な演技もできるはずと信頼していた証のように思えます。

 実際、田中さんはヒロインに静かにプレッシャーを与えつつ、視聴者も背中に嫌な汗をかいてしまうような不穏な空気感を見事に作り上げていたのでした。

田中みな実主演のドラマは?

 田中さんはほかにも多くの作品に出演。2021年10月期でヒット作となったミステリー『最愛』(TBS系)では、学生時代に性被害を受けたことで人生を狂わされ、主人公を追い詰めていくフリーライター役をシリアスに好演。今年7月期で9月に最終回を迎えたハートフルコメディ『ばらかもん』(フジテレビ系)では、五島列島で看護師をするシングルマザーで、主人公に厳しくもやさしく寄り添っていく役柄をナチュラルに演じていました。

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 この2作品には主要キャラではなくバイプレイヤーとしての出演でしたが、色気を封印して作品のテイストに合わせ、抑揚を効かせた演技を披露していたのです。悪目立ちすることなどなく、作品に自然に溶け込むこともできるということでしょう。

©時事通信社

 また『最愛』、『あなたがしてくれなくても』、『ばらかもん』はGP帯ですが、23時台のドラマであれば、2022年4月期のルームシェアをテーマにしたコメディ『吉祥寺ルーザーズ』(テレビ東京系)、2022年10月期の歳の差&三角関係を題材にしたラブコメ『ボーイフレンド降臨!』(テレビ朝日系)でヒロインにも抜擢されています。

 この2作品でヒロインとしてのキャリアを積み、さらにコメディも演じられることをドラマ業界に示したわけです。

『M』のころから変化して、『あなたがしてくれなくても』では、きちんと繊細な芝居ができる一俳優として田中さんが位置付けられていたように思います。

 アナウンサー出身で女優として大成した人といえば、故・野際陽子さんが真っ先に思い浮かびますが、逆に野際さん以降、目立つ人は少ないともいえるかもしれません。

 しかし、田中さんは現在、着実にキャリアを築いています。そろそろGP帯で田中さんが主人公やヒロインなどを演じるドラマが制作されても、不思議ではないポジションまで来ているのではないでしょうか。