「首都圏でスタッドレスが必要な日はほとんどない」は本当か
「雪が降ったら車に乗らないので、スタッドレスは履かない」というスタンスは、自身の自制心を信頼したうえで成り立つものだ。しかしいざ雪が降ったとき、どんな状況でも「車に乗らない」と判断できる人がどれほどいるだろうか。この判断が各人に委ねられているかぎり、間違いを起こしてしまう者は後を絶たないように思われる。
そもそも「東京でスタッドレスタイヤが必要になる日はほとんどない」という前提じたい、無条件に肯定できるようなものではない。気象庁の過去30年のデータ(1991年~2020年)を見ると、東京で最深積雪1cm以上を記録した日数は年間平均2.8日、5cm以上でも1.2日ある。
さらに、雪やみぞれ、細氷などの気象現象が観測された「雪日数」は年間平均8.5日。降雪や気温低下にともなう路面凍結のリスクまで考慮に入れれば、「ノーマルタイヤで走るべきではない日」は思いのほか多いのではないか。結果的に雪が積もらなくとも、「車で出発しても大丈夫か」と気を揉まなければならない状況がシーズンに何度も訪れることになる。
東京のようにあまり雪が降らないエリアでは、スタッドレスタイヤが必要となるのは「イレギュラーな状況」だと考えられているために、「履かなくても問題ない」という判断が多数を占める。しかし、「年に数度車が使えなくなる」というだけでなく、「天気予報や雲行きが怪しくなるたび適切に判断を下さなければならない」というのは、日常的に運転している者にとって相応のストレスになりうる。何度も判断を重ねているうちに、「大丈夫だろう」のラインが緩くなっていくことも十分に考えられる。