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2回目の週間МVPを受賞して抱いた特別な思い

 つらいのは自分だけじゃないですから。

 いいプレーをすることで、明るいニュースを届けられればと思っていました

(「大谷翔平 二刀流メジャーリーガー誕生の軌跡」P215)

 大谷翔平は2023年7月8日現在、アメリカン・リーグの週間МVPを6回受賞しています。そのうちの2回は2018年のルーキー時代ですが、2018年9月10日に受賞した2回目には特別の思いがこもっていました。

 同年6月、大谷は右肘の内側側副靱帯がグレード2の損傷と診断され登板ができなくなりますが、その間、PRP注射と幹細胞注射の治療を受けることで、9月に投手として復帰します。しかし、登板した試合で2イニングは良かったものの、3イニング目に球速が目に見えてダウン、エンゼルスの医師団はトミー・ジョン手術を勧める決断を下します。トミー・ジョン手術を受ければ、少なくとも1年間は投手として登板することはできません。

 みんながネガティブな気持ちになる中、大谷は1週間で打率・474、4本塁打、10打点を記録、週間МVPを受賞するほどの活躍を見せたのです。さらに周りを驚かせたのは、「つらいのは自分だけじゃないですから。支えてくれる皆さんにも、つらい思いをさせてしまっているので。いいプレーをすることで、明るいニュースを届けられればと思っていました。だから良かったと思います」というコメントでした。つらさも見せずに周りを安心させ笑顔にさせるところに大谷のすごさがありました。

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©文藝春秋

敬遠の増加を「いい経験ができた」と語る

 最終的にそのレベル(4試合13四球)に行きたいなとは思っていましたけど、この段階でこういう経験をさせてもらえるというのはすごく新鮮でした

(「Number」1040 P14)

 2021年のアメリカン・リーグのホームラン王は、ブルージェイスのゲレーロJr.とロイヤルズのペレスの2人が48本で獲得しました。大谷翔平も大いに期待されていましたが最終的に46本と、2人には2本及びませんでした。

 大谷があと2本打てなかった理由の1つに挙げられているのが四球の多さです。45号本塁打を打った後、大谷は「4試合で13四球」という、ベーブ・ルースやブライス・ハーバーに並ぶメジャー記録を打ち立てています。こうした四球の多さに、中には「大谷はアジア人だからホームラン王をとらせたくないんだ」といったうがった見方もありましたが、実際には大谷の後ろを打っていた、リーグを代表する強打者マイク・トラウトが同年5月に右ふくらはぎの負傷で長期離脱したため、相手投手からすればエンゼルスの打線は「大谷さえ抑えればいい」状態になった影響が大きかったと言えます。