ロサンゼルス・ドジャースと10年7億ドル(約1022億円)の契約で合意した大谷翔平。2023シーズンはMLB史上初となる2度目の満票MVPに輝き、ホームラン44本で、ホームラン王のタイトルも獲得している。なぜ大谷選手は、世界一厳しいメジャーリーグという舞台で、これほどの活躍ができるのだろうか?

 ここでは、大谷翔平の高校時代から2023年WBC優勝までの発言を厳選し、その言葉の背景やエピソードを解説した『大谷翔平は、こう考える 不可能を現実に変える90の言葉』(PHP文庫)より一部を抜粋してお届けする。(全4回の3回目/4回目に続く) 

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新しい環境には期待と同時に不安もたくさんある

まったく違う環境に行くということは、どの分野でも不安なことが多いと思う。 

でも、さらに良くなる可能性がそこにあったら、僕はチャレンジしてみたい

 

(「道ひらく、海わたる」P52)

 新しい学校に入る、新しい職場に行く、住み慣れた場所から引っ越しをするなど、人は人生では何度もまったく違う環境に行くという経験をするものですが、そこには期待と同時に、「うまくやっていけるのだろうか」「おかしなことにならないだろうか」といったたくさんの不安もあるものです。

成長に向けて挑戦をするのが大谷の考え方

 大谷翔平は一旦は高校からそのままメジャーリーグを目指したいという意志を表明しますが、ドラフトで日本ハムファイターズが指名したことによって違う選択をすることになりました。交渉中、大谷は監督の栗山英樹に「アメリカではどうやって失敗するんですか」という質問をして驚かせています。成功ではなく、日本人選手が失敗するのはどんなケースかと質問するのを見て、栗山は「彼は野球選手として大丈夫な方向に進むはずだ」と確信したといいます。

 これまで多くの日本人選手がメジャーに挑戦していますが、華やかな成功者の一方には、アメリカで芽が出ずに帰国する人もいます。当然、大谷にもその不安はあったはずですが、大谷自身は技術的にも人間的にも少しでも自分が「良くなる可能性」があれば、新しい環境で「やってみたい」と考えていました。失敗の恐れがあることを十分に承知したうえで、なおかつさらなる成長に向けて挑戦をするというのが大谷の考え方です。