2021年6月1日に、東京都立川市内のホテルの一室で、当時19歳の男が派遣型風俗店に勤務する女性従業員Aさんを殺害し、また、男性従業員をホテルの廊下で刺して全治3カ月の怪我を負わせた事件。
男(21)に対する殺人と殺人未遂、銃刀法違反の罪を問う裁判員裁判が11月21日、東京地裁立川支部(新井紅亜礼裁判長)で開かれた。この日、被告男性は白のワイシャツに紺のベストを羽織り、グレーのジャージのようなパンツ姿で法廷に現れた。顔はマスクを着けていた。
被告人質問が行われ、弁護人と検察官が質問をしたが、被告男性は「私はオーディン」などの不規則な回答に終始した。
被告人男性の父親の証人尋問も予定されていたが、出頭しなかった。検察側の報告によると、弁護人から聞いた連絡先に電話をしたところ、当初は「行かないといけない」とは言っていたものの、「(法廷に)出たくない。自分たちの人生も狂ってしまった」などと話をしていたという。そして、数日前から連絡も取れなくなったという。
検察側は「証言するように説得したい」とした一方で、弁護側も「障害がどのように見過ごされてきたのか。事件の真相に迫るのに重要な証人です。裁判所にも協力をお願いしたい」と述べた。裁判所は出頭の要請をするとともに、期日内に証言を調整するという。
「私はオーディン」「裁判官が胸を掴んできます」
続いて被告人質問が行われ家族についての質問から始まったが、頭や体を揺らすばかりで必要な答えは得られなかった。
弁護人「家族関係のことを教えてください」
被告人「……」
弁護人「お父さんは何をしていますか?」
被告人「……」
弁護人「答えられますか?」
被告人「私はオーディン」
これまでの公判でも被告人はさまざまな不規則発言を繰り返してきた。弁護人の質問にも、検察官の質問にもほとんど答えなかった。この日は「私はオーディン」を何度も繰り返した。
弁護人「中学時代のことをお聞きします」
被告人「心神喪失状態」
弁護人「高校受験のときに使う自己PRカードを書いたのを覚えていますか? どういうことを書きましたか?」
被告人「(小さい声で聞き取れない)」
弁護人「高校時代に宗教の施設に出入りしたことがありますか? 真剣に信仰をしていたということですが、覚えていますか?」
被告人「……」
弁護人「話せないですか?」
被告人「裁判官が胸を掴んできます」