成功のカギは「食らいつく力」!?
――全体の構成についてお伺いします。「アクオーズ」は新人デザイナーのブランドですが、早い段階で東京コレクションという大舞台で大成功を収めます。そうされた理由は?
はるな ゆっくり描く方法もあったと思うんですけど、本当に描きたいことはその先にあったので、急がないとそこまでいけない!というか。ショーの成功ももちろん大きなトピックですが、そこは映画で言ったら冒頭10分って感じです。
――開君もショーを成功させたあと「ここからがスタートだ」みたいなことを言ってますね。ショーの後、受注会をやって注文が入っても、入金が半年先のため、布や縫製の代金を支払うと内情は火の車です。なのにショップからは足元見られて……。ファッション業界で生き残っていくのは大変だなと。
はるな 本当にそうなんです。ショーを1回成功させて、業界で話題になって、展示会に人が沢山来ても生き残れない。半年に一度それを続けて、継続的に売れるものを生み出し続けるのは難しすぎて、ほとんどの子が2、3年で消えていくんです。
若いデザイナーは、そういった業界の構造が分からないままに巻き込まれていくから消えていくのかな?と思う部分もあって。これからファッション業界を目指す人に、少しでも役に立つ作品になるといいなという願いもあったりします。
――ズルい大人が言い寄ってきても、知識があればはねつけられますもんね。バイヤー経験のある開君の知識で、バイヤーから提案された無茶な掛け率をはねつけるシーンがあります。
はるな 専門学校ではそういう実務的なことはあまり教えてもらえないので、ぜひマンガで共有したいというか。
――開君は才能を見出す目を持っている一方、闇雲に若い子を応援しているのではなく、情熱があって、ちゃんと努力も感謝も出来る子ならと明言しています。そこも刺さった部分です。
はるな そうなんですよね。例えば、売れっ子の女優さんのことを「顔が綺麗で芝居が上手いから成功したんだ」ってみんな思っているけれど、そんな能力を持った人はゴマンといて、大多数は美しいまま消えてゆく。
成功のカギは「いかにそこにしがみつくか」にあって、才能よりも食らいつく力というか、そっちが重要だなと思うんです。ファッション業界だけでなく、マンガの世界もそうだし、いろんな分野でそう言える気がします。