どんなに才能があっても、夢破れて去っていく若者が後を絶たない――。

 そんなファッション界に現れた超新星デザイナー、ジャン君。「業界の構造を変えられるなら」と彼を支え、デザイン以外の一切の業務を請け負う開(カイ)君。しかし、いつも能天気にほほ笑むジャン君には裏の顔があって……。

 煌びやかなファッション界の裏側にスポットをあて、そこで鎬を削る人々を描いた『ファッション!!』の文藝春秋での連載も最新5巻でひと区切り。そこで、作者のはるな檸檬さんを直撃し、作品に込めた思いや今後の展開についてお話を伺いました。

ADVERTISEMENT

超新星デザイナーのジャン君と、デザイン以外の一切の業務を請け負う開君

実情と世間のイメージの乖離を描きたい

――はるなさんは、宝塚オタクの日常を描いたデビュー作『ZUCCA×ZUCA』(講談社)で注目され、24歳の派遣OLを主人公に「ふつう」とは何かに向き合った前作の『ダルちゃん』(小学館)が「ウェブ花椿」連載中から大反響を呼びました。そして、今回の連載『ファッション!!』が初の長編ストーリーになる訳ですが、取り組んでみていかがでしたか?

はるな 本当に難しくて……学びを得つつ、すごく迷いつつ、葛藤もした5巻分って感じでした。私は美大を出て、イラストレーターになりたくて東京に来て、同郷の東村アキコ先生のアシスタントをやらせていただいたのをきっかけにマンガを描くようになったんですが、そもそもマンガ家になりたいともなれるとも思っていなかったから、マンガに対するこれといったロジックがないまま、感覚でここまできてしまっていて。「これで合ってるのかな?」みたいな迷いがずっとあったんです。

はるな檸檬さん

 前作の『ダルちゃん』を描いていた頃からその思いは強くなって、マンガの描き方について諸先生方にお話を伺ったりもしたのですが、その道で大成功された方々には、当たり前ですけどそれぞれのやり方がある。最終的に、ようやく「私なりにやるしかないんだな」という心境に行きついた感じです。