ファッション業界の「見えない部分」を共有したかった
――迷われつつも得る物が大きい連載だったんですね。ファッション業界の裏側にまでリーチした作品なので、最初から難しい題材になると分かっていらっしゃったと思います。それでも、そこを舞台にしようと思った理由は何でしょう?
はるな ファッション業界を舞台にした作品は結構あるんですけど、これまでメインとして描かれてきたのは華やかな部分なんですよね。でもそれってほんの一部で、見えない部分の比重が大きいということを取材を重ねながらすごく感じていたんです。実情と世間のイメージが乖離しているなら、それを描きたい、皆さんと共有したいという。
――ブランドがどうやって世に出ていくかはもちろん、洋服のディティールやコンセプトなどもリアリティーと説得力を持って描かれています。すごい取材力ですよね。
はるな もともと業界の人が周りに多かったこともあって、「タダでいいのでショーのお手伝いをさせてください。その代わりバックステージの写真を撮らせてください」みたいなことをずっとやってきて、その蓄積が大きいですかね。
実際に現場で手を動かして、初めて分かることも結構ありましたし、描いている最中も直接アドバイスを貰ったり、服や演出に関しては、それを本職としていた方に監修に入っていただいて。面白いなと思うコレクションの写真を沢山ストックしておいて、そこから要素を抜き出すこともありました。
――内部まで入り込んだからこその緻密さなんですね。
はるな どんな業界にもあることだとは思いますが、描けないようなこともいっぱい聞きました(笑)。
――たしかに、どの業界にも蓋をされてきた部分ってありますよね。コロナ禍を機にその蓋が外れ、「この構造はおかしいんじゃないか?」という疑問がいたる所から噴出してきた気がします。『ファッション!!』は、そういった時流にも乗っていたからこそ多くの人を惹きつけたのかなと。
はるな 私も「これっておかしいよね」と思うことが多々あって、それは多くの人が社会の中で感じていることなんじゃないかと思います。占星術ではコロナ禍を機に「地の時代から風の時代に変わった」という言い方がされていますが、組織を重視するがために個人が無視されてきた時代から、個人が大きな存在になっていく時代というか、いままさに価値観が逆転していっている境目にいる気がしています。時流に乗ったか?と言われればたまたまですが、大きくテーマとして繋がっている気はします。