佳代子の人相や服装が、S病院での目撃情報と酷似していたため、さらに詳細な状況を調査したところ、宿泊中に彼女がK市の電話番号に市外通話をしていることがわかる。そこで通話先についての捜査を行ったところ、先方は呉服店で、電話をかけてきたのは、同店の客で関東地方のY市に住む福田佳代子であるという。
呉服店で佳代子を知る店員の山田義男によれば、佳代子はY市で弁護士の横山新三郎という32歳の男と同棲しており、70代くらいの母親が同居しているはずとのことだった。
立ち寄りそうな場所や旅館等への内偵捜査を進めることに
捜査員が内縁の夫である横山に対して事情聴取を行ったところ、彼が外出中の7日に、佳代子と彼女の母親である福田トメ(68)が、佳代子のお産のために出かけると女中に伝言して出たきり、いまだに帰宅しておらず、何の連絡もないと供述する。
捜査員は横山から佳代子の写真を入手。それをS病院とYホテルの関係者に見せたところ、目撃した相手に間違いないとの証言を得ることができた。そこで捜査本部は佳代子を本件の被疑者と断定。逮捕状の発付を得て、全国に指名手配するとともに、捜査員を佳代子の自宅への張り込み捜査に当て、彼女が立ち寄りそうな場所や旅館等への、内偵捜査を進めることになった。
そうしたなか、11日の午後8時頃には、H県警本部から該当容疑情報が寄せられ、捜査本部が色めきたつ。これは、生まれて間もない嬰児を抱えた女性がいるとの情報だったが、その女性については、生まれたばかりの知人の子供を貰って、戸籍面を実子とするため、四国地方の島に帰る婦人であったことが後に判明する。
被害者嬰児の一時保護預かり先に国立病院が承諾
続いて12日の午前2時頃、S県警本部から「立ち回り先として手配のあったA市の旅館に、手配されている福田トメほか1名の婦人が赤ん坊を連れて現在宿泊中であるから、A署員が張り込み中である」との電話があった。
その連絡を受け、捜査本部からは主任警部以下5名がA市に急行。午前5時半頃にA署へ到着した。