富山の冬は想像以上に厳しく、雪の深さに驚いた日々も終わり、北陸にもようやく春の兆しが訪れ始めました……。こんにちは、伊藤智仁です。昨年の「月刊伊藤智仁」に引き続き、今年も文春野球に登場することになりました。
伊藤智仁が、富山より愛を込めて……
昨年限りで、25年間在籍したヤクルトスワローズを退団し、今年からはBCリーグ・富山GRNサンダーバーズの監督を務めることになりました。今年の2月には住み慣れた東京を離れて、単身赴任で富山での生活を始めました。NPB入りを目指す若き選手たちと日々、汗を流しながら第二の人生をスタートさせたところ、「今年も文春野球に参加しろ!」と命令を受けて、またまた登場することになりました。どうぞよろしく!
NPBを離れた自分が、役に立てるかわからないけど、参加するからには長谷川(晶一)監督とともにビールかけ……いや、ビールかけちゃうな、ビールはもったいないし、痛風気味の監督の身体を気遣って、プリン体ゼロのホッピーかけをしたいと思っています。ところで、僕は何をすればいいのか? 詳しく聞いてみると、「富山の地から、今季の古巣・ヤクルトの戦いぶりを見守りつつ、かつての仲間たちにエールを送ってほしい」ということなので、「それならばお安い御用」と引き受けました。
富山での生活が始まってすぐに、高岡ケーブルテレビと契約しました。ヤクルト戦を中継するCS・フジテレビONEも見られるので、時間のあるときにはじっくりと見ています。偉大なOB若松勉さんのほのぼのとした解説も、去年まで一緒に戦っていた真中(満)の解説者デビューも、「あぁ、緊張しとるなぁ」と、ニヤニヤしながら楽しんでいます。
ブキャナンのガッツにハラハラ
さて、そろそろ本題に入りましょうか。今年のヤクルトは投打の歯車が噛み合って、開幕ダッシュに成功しました。去年までのヤクルトと比べて、今年の最大の目玉は青木宣親の加入でしょう。開幕時点では川端慎吾も加わって、打線はかなり厚みを増しましたよね。あとは廣岡大志。彼は守備でもソツなくこなしているし、7日の巨人戦では5打数5安打。彼のポテンシャルは並外れているし、彼をカバーする周りの強力打線の援護もあるので、廣岡はまだまだ打つでしょうね。
「この打線が、去年あればなぁ……」という気持ちも多少はあるけど、まぁ、それはないものねだりなので考えるのはやめましょう。でも、これだけのメンバーがそろっていれば、間違いなく96敗もせんかったでしょうね(笑)。
ピッチャーに関して言えば、「ブルペン陣がちょっとしんどいかな?」っていう気がしますね。でも、先発陣に関してはブキャナンも状態はよさそうだし、新外国人のハフも使えるめどは立ったんじゃないのかな?
ブキャナンと言えば、6日の巨人戦。テレビで見ていたけど、気持ちの入ったいいピッチングでしたね。あの試合でスリーベースを打ちましたよね。点差がついているのにフルスイングをして、セカンドを回ったときにちょっとコケたりしながら、サードに猛スライディング。ガッツあふれるのが彼の長所なんだけど、見ている方はハラハラしますよ(笑)。「そんなに走らんでいいから、もう1イニング余計に投げてくれ」というのが、ベンチ内の田畑一也コーチの心境だったと思います。
今後は、点差のついている場面でブキャナンが打席に入ったら「絶対に打つな」というサインが出ることになるでしょうね。普通は、「この場面は打たなくていいですよね?」って聞いてくる投手ばかりなんだけど、ブキャナンの場合は、「オレが決めてやる」って考えるタイプ。それが彼のいいところでもあるんだけど、コーチとしてはハラハラです。
石川の好投、館山の復活
それに石川雅規もようやく勝ててホッとしましたよ。去年、連敗が続いていたのに、それでも痛いのかゆいの言わずに黙々と投げ続けていた姿を見ていただけに、彼の勝利に僕も感動しました。これに原樹理が4月いっぱい踏ん張ってくれれば、5月になればライアン小川、星知弥が復帰すると思うので、先発陣は十分コマがそろってきましたよ。
そうそう、5日の広島戦で、館山昌平がきちんと試合を作れたのは大きいですよね。明らかに去年よりもボールもきちんとコントロールできていました。去年だと、3回ぐらいにガクッと球威が落ちて、ストライクが入らなくなっていたけど、この間のカープ戦は4回まではほぼ完璧。あの日は丸佳浩に3ランを打たれたけど、あれは不用意な一球だっただけで、今後注意すれば済むこと。自滅したわけじゃないから全然大丈夫ですよ。一年を通じてローテーションを守っていくのは厳しいかもしれないけど、大事に使っていけば試合を作れる先発投手として十分やってくれるんじゃないかな?