「『若いから大丈夫!』『きっと切れ痔』とスルーしないでほしいんですね」
消化器内科の名医である石黒智也氏が血の混じった便に警鐘を鳴らす理由とは……書籍『消化器内科の名医が本音で診断 「お腹のトラブル」撲滅宣言!!』(双葉社)より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)
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消化器内科医は血便がお嫌い
読者のみなさんに、ぜひお伝えしておきたいことがあります。それは、血便。
うんちで悩む患者さんには大腸カメラなどの検査をしてもらうことが多いですが、誰彼なしに勧めるわけではありません。例えば、「過敏性腸症候群で、もう何十年も前から同じ症状」という方であれば、そんなに早急に検査を受けていただかなくてもいいと思うんです。
検査をしたほうがいいと考えるのは「症状に変化がある」患者さんです。「以前は○○だったんだけど、最近、××になってきました」というケースです。
特に、変化というより「悪化」している場合には、じっくり検査することになります。ここで、僕は皆さんに強く訴えたい。
「うんちの時に血を見たら、ほっとかない!」と。
よく患者さんに「どのくらいの血の量だとマズいんですか?」と質問されますが、僕ら医者にしたら、量の問題ではない。全部嫌なんですよ。尻から出る血は全部、嫌!
便器を薔薇の花びらで満たしたかのような鮮血も嫌ですし、オーロラのようなうっすらしたのも、ペーパーにほのかに付くヤツも、全部、全部、嫌なんです。
血便は大腸がんなど重い消化器系の病にとって、一番不吉な予兆。僕にとっても最も心配なサインだから、症状のある方には真っ先に検査を勧めます。
もちろん、回数が多いほうが深刻です。1回だけよりも、そりゃ何回か続くほうが嫌。よりリスクが高い症状だからです。
大腸がんにも様々なケースがありますが、意外と血はバーッと出ないものなんです。便でこすれて、少々出血するくらい。脅かすわけじゃないですが、「ちょっとだから平気だろう」と甘く見て放置するのは危険です。体からのサインを大切にしてください。
若い人も例外ではない
若い人たちもぜひ、うんちの血には気をつけていただきたい。
確かに20代前半までの大腸がん発症は珍しいですが、だからと言って、「若いから大丈夫!」「きっと切れ痔」とスルーしないでほしいんですね。
今は、早期発見ならば、大腸がんは内視鏡で取れちゃいますから。がん切除後も、ステージが進行していなければ、抗がん剤や放射線治療も必要ないケースがほとんどで、元気に生きていけます。
もし「痔」であるならば「あなたは〇〇痔です」という診断結果が出て、治療すればいいだけ。逆に安心ですよね。
どうか大事になる前に「血便は気にしとけ!」って、医者として声を大にして叫びたいです。