「週刊文春CINEMA」の≪BEST CINEMA 2023≫第3位は、宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』。異例の「宣伝なし」にも関わらず、大ヒットを達成。公開直後、スタジオジブリの鈴木敏夫プロデューサーに勝者の弁をうかがおうとした…ところ、話は今作の“裏側”からの見方へ。
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「宣伝しない」ことを選択したワケ
──公開前にお話をうかがったとき、「宣伝をしないのは博打」とおっしゃっていたので、「博打を当てた」感想をうかがいたいと思いまして…。
鈴木 当たりましたかね?(笑)
──これだけ話題にもなってますし、当たったでしょう(笑)。
鈴木 宮﨑作品の場合、ロングレンジなんですよ。初動が良くても9月以降にお客さんが来てくれるかは作品の力だと思いますし(註:ジブリ作品の公開はたいてい7月中旬)。ここから年末までどういう興行ができるかっていう…9月のシルバーウィークの数字が気になります。『千と千尋の神隠し』(01年)は、9月にお客さんに来ていただけたのが大きかったですしね。
──今作は観た人が解釈や感想を発信したくなるような内容でした。「宣伝しない」ことでかえってSNSで広まったわけですが、そこまで読んだ上でその方法を選ばれたんですか?
鈴木 まさか(笑)。何にも考えてないですよ。いろんな人が、話題に取り上げてくれればいいとは思ってましたけどね。
あのキャラクターのモデルは「鈴木さんじゃないよ!」って(笑)
──いろんな解釈が出てましたが、「青サギ/サギ男は鈴木敏夫だ」というのが目立ちました。鈴木さん自身、そうおっしゃってますけど。
鈴木 僕が言う前から、皆さんそう指摘してましたよねえ(笑)。…映画の中で、サギ男と眞人が話すシーンがあるじゃないですか。その感じが、僕と宮さんが喋ってる時と一緒なんですよ。話してる内容は違いますよ。でも、やり取りの雰囲気はまったく同じです。
──それは、鈴木さんからすると「サギ男、俺に決まってるじゃん!」っていうレベルなんですか。
鈴木 そうです。もともとは絵コンテを読んでて、群を抜いていいキャラクターが青サギ/サギ男だと思ったんです。こんな造形のキャラクター作る人、他にいないじゃないですか。それで、宮さんを褒めると同時に、あれ、モデルは誰なんですか?」って聞いたら、宮さんは「鈴木さんじゃないよ!」って慌てて言うわけですよ(笑)。