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──先回りして否定するんですね(笑)。

鈴木 「鈴木さんじゃない、鈴木さんじゃないよ!」って(笑)。面白いですよね。

少年の友情物語であり、成長物語でもある

──はじめのうちは結構不気味なキャラクターでしたね。夏子が眞人に「覗き屋の青サギ」と言い、その後に眞人が父と夏子の夫婦の姿を覗くシーンがあって…。話が逸れますが、その覗いているところや、夏子が眞人に妊娠したお腹を触らせるシーンにはドキッとするエロさ、宮﨑監督の枯れてなさを感じました(笑)。

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鈴木 エロさですか(笑)。まあ、官能性ってことでしょうね。少年の、そういうドキドキする感じを忘れてない82歳、すごいですよね。

──すごいです。…で、「覗き屋」の青サギと眞人は表裏一体の関係なのかなと想像しながら観ていたら、それから二人はだんだん友情を築いていきます。

鈴木 『風立ちぬ』(13年)のときもね、主人公の(堀越)二郎ともう一人の仲間(本庄)の友情物語をやりたかったんです。でも、奥さん(菜穂子)との話もあるし、上手くいかなかった。そのリベンジをこういう形でやるのかと思いました。今作は、少年の友情の物語であり、異世界で成長して帰って来る少年の成長物語として見ればとてもわかりやすいんですよ。

木村拓哉の演技にお礼を言った宮崎駿

──一方で、お母さんとの関係についての話でもありますよね。

鈴木 これも宮さんにとっては大きなテーマですよね。お母さんを若くして亡くしてますから。

──お母さんが美少女として出てくるという…『エヴァンゲリオン』では、まだSF的な意匠で“美少女になったお母さん”ですが、今作はダイレクトに“美少女のお母さん”。

鈴木 これはですね、しょうがないというか…。宮さんが大事にしているお母さんの写真があるんですよ。それを見るとですね、美女なんです。

主人公・眞人に食事を振る舞う少女時代の母・ヒミ ©2023 Studio Ghibli

──宮﨑さんのお母さんが。

鈴木 ええ、それが彼には刻まれているんでしょう。彼が『美女と野獣』の図式が好きなのも、そういうことが元になっているんじゃないかな。もともとの『もののけ姫』もそういう話だったし。

──眞人のお父さんも面白いキャラクターでした。嫌な押しの強さはあるけど、完全な悪人ではない。木村拓哉さんの演技も絶妙で。

父権的だが優しくもある父・勝一を木村拓哉が好演 ©2023 Studio Ghibli

鈴木 このお父さんは生半可な人には任せられないなと思って、僕が木村さんを推薦したんです。あの演技は、宮さんも涙を流すほど喜んでましたよね。収録後、宮さんは木村さんに、お礼を言ってました。「ようやく父のことを思い出した」って。