日本の男性がコンドームをつけなくなる未来が来る?
ふじさわ 『射精責任』はアメリカでもかなりセンセーショナルなものとして受け取られたと思います。でも、原稿を読んで本当にびっくりしたのは、向こうではピルやIUDなど女性主体の避妊方法がすごく普及してるんですよね。
普及しているからこそ、9割近くの男性が性行為の際にコンドームをつけてくれないことが問題になっているんです。日本の男性はアメリカの男性よりはコンドームをつけているんですけど、着用率35%ぐらいなんですよね。
10%と比べれば35%は多いかもしれない。でも100%ではないわけです。日本では女性主体の避妊方法の普及率が少ないことを考えると、避妊実行率はトータルでアメリカより劣るんですよ。十数%負けているんです。
避妊を男性に頼らざるを得ない日本の現状は遅れているし、一方で女性主体の避妊方法の導入が進んだときに、日本の男性は今まで通りコンドームをつけるのかっていうと、疑問だなと思ってしまいます。10年後20年後に、アメリカに遅れて「マジで日本の男性コンドームつけてくんないな」って話が出てきかねないなっていうのは感じてます。
小野 なるほど。女性主体の避妊が進むと、そこにあぐらをかくのではないかと。
ふじさわ そうですね。私は低用量ピルを服用してるんですけど、それを言うと相手がしれっと1回(コンドームを)外すんですよ。「え? 勘弁してくれよ」って。私は自分の健康や、自分が安心したい気持ちでピルを飲んでいて、あなたのためじゃないんだよ、みたいな。
それが、いわゆるワンナイトの相手じゃなくて、継続的なパートナーシップを結ぼうと思って選別に選別を重ねた人ですら起きるってなると、どれだけの人がそういう意識でいるんだろうってちょっと考えちゃいますね。
だから、男性に当事者意識を持ってもらうのは、本当にすごく難しいことなんだなって思います。例えば妊娠したときに女性が感じる不安とか、そうやってしれっとコンドームを外したことで、知らないうちに妊娠して中絶してるかもしれないってことを、想像もしないんだろうなって。
小野 理想を言えば、女性主体の避妊方法を普及させつつ、男性にも「射精責任」を感じてもらう、その2本の柱でやっていかなきゃいけないですよね。そうしないと全然追いついていかないから。だって日本ではIUDの存在すら知られてないもんね。
ふじさわ 私も『射精責任』を読んで初めて2種類あるって知りました。
村井 存在するのは知ってたけど、どういう形なのか、どれぐらい入れるのかといった細かい部分は私も女性なのに知らなかったです。だから男の人が知ってるかっていうと、知らないと思う。
小野 本当に。男性も知っとくべきかもしれないですよね。