「恋愛に鈍感なのに天然でモテる女子」もやっとする問題はある
すず木 能動的すぎる、計算高すぎる主人公はあまり人気が出ない傾向はありますね。王子様を自分から好き、というケースも少ないですね。やっぱり幸せは自然にやってきた方がいいし、恋愛は追われる方が楽しいんだと思います。ただ男性のハーレムも「女性たちに追いかけられている、依存されている」のように受け身のケースもかなりある気がしますね。
――ただ健気で優しくて恋には鈍感で天然というヒロインは、一歩間違えると鬱陶しくもなりそうなのですが、そこは大丈夫なのでしょうか。
坪井 それはさじ加減が難しい問題で、ピュアすぎて恋愛に鈍感なのに天然でモテる女子って、ちょっとモヤッとすることありますよね(笑)。友達にいても許せる、共感可能な鈍感さのバランス感が大事だと思います。
すず木 売れている作品の主人公は、天然ではあっても芯がしっかりあるキャラクターが多いですね。自分と人を比べたりせず、信念に沿って自分にできることを実直にやっていくタイプです。
――「令嬢系」の歴史の中で、最強のヒロインっているんですか?
すず木 『虫かぶり姫』のエリアーナは絶妙なバランスだと思いますね。ド天然を貫いているのに、嫌味がなくて物語の中でも読者からも愛され度が本当に高い。アニメ化したのもエリアーナのキャラクターの魅力は大きかったと思います。
坪井 エリアーナは「本の虫」と呼ばれるくらいの読書家で、知識が豊富で天然だけどおバカではないんですよね。世間的なことには徹底的に無知だけど、物事の本質を見抜く賢さは持っている、というのがいいんですよね。
――市場調査や読者の趣味嗜好をマーケティングして制作するのは近年のwebマンガ特徴ですが、「令嬢系」もかなり市場を見ながら作られているんですね。
坪井 私がいる部署はブックライブの中でも、SNSなどの広告で読者の興味を引くことができる漫画を分析するコンサル的な仕事をしています。「読めば面白い」ことはもちろん大前提なのですが、読者を増やすためには“広告の分かりやすさ”も大切。そのためにわかりやすい設定をぎゅっと最初に盛り込むことが多いです。