「我々大人には、若者を守る義務がある」

 コロナやソーシャルネットワークの氾濫など、現代の若者を取り巻く環境は以前にもまして過酷になったように映る。若者の心の悩みや環境という本作でも描かれる課題について監督がしめくくる。

「この映画は真実に忠実にありたいと思った。同時に若者の精神的環境についても触れたかったんです。僕には13歳の娘がいるが、彼女がパンデミックを体験し友達やクラスメートに会えずにいた状況は悲劇的だと思ったし、今後コロナが若者にどんな悪い影響を与えるのだろうかと不安だった。

 この過酷な世界で、若者は自分の居場所をみつけなければならないというテーマを持ちつつ、希望のある内容にしたかった。リュカが最後に歌う歌詞のようにね。我々大人には、若者を守る義務があると思います」

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左はポール・キルシェの兄を演じたヴァンサン・ラコスト © 2022 L.F.P・Les Films Pelléas・France 2 Cinéma・Auvergne-Rhône-Alpes Cinéma

INTRODUCTION
17歳の少年が父の死によって訪れた深い喪失感から、再び前を向くまでを描く。監督はこれまでも自身のセクシャリティなどを表現してきたクリストフ・オノレ。少年時代の体験をもとにした本作では自ら父親役を演じた。主人公リュカ役は300人近くのオーディションからポール・キルシェが選ばれた。17歳の少年をソリッドな感受性で演じきり、サン・セバスティアン国際映画祭主演男優賞を受賞した。母親イザベル役にはジュリエット・ビノシュ。大切な息子を支える気丈な母親を熱演している。

STORY
父の死を聞いて自宅へ戻った17歳のリュカは、母イザベルとパリから駆けつけた兄のカンタンと悲しみに暮れる。葬儀の夜、感情を爆発させたリュカは、兄から気分転換のためにパリで過ごさないかと誘われる。ルーブル美術館を巡るなどパリの街に魅せられるリュカは、カンタンのルームメイト、リリオに惹かれていく。だが、リリオは想像もつかない秘密を隠していた。やがて、パリでの刺激的な日々が、リュカの心に新たな嵐を巻き起こす。

STAFF&CAST
監督・脚本:クリストフ・オノレ/出演:ポール・キルシェ、ジュリエット・ビノシュ、ヴァンサン・ラコスト、エルヴァン・ケポア・ファレ /2022/フランス/122分/配給:セテラ・インターナショナル/公開中

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