特殊詐欺の被害は深刻で、2023年上半期の被害は、前年度の件数、被害総額とも上回っており、2年連続の増加傾向である。2023年に世の中を震撼させたものに、特殊詐欺のノウハウを用いた強盗がある。特殊詐欺では犯行の指示を出す者と実際にお金を取りに行くなどの実行犯といったように役割分担をしながら、お金を効率よく騙しとろうとするわけだが、この手法を強盗に転用してきたグループが現れた。
その一つがルフィを名乗る指示役による犯行である。この犯罪グループによる被害が2022年から2023年初めにかけて次々に起こり、ついに狛江市では高齢女性が殴られて亡くなる事件も起きた。
気がついたら引きずり込まれている“闇バイトの手口”
これらの事件で注目されたのが、闇バイトの存在である。強盗や詐欺などの実行犯らは、X(旧ツイッター)などのSNSを通じて募集されることが多い。闇バイトの恐ろしさは、これまで犯罪をしてこなかった未経験者たちが、組織からの指示で、簡単に犯罪に手を染めてしまうことにある。募集には「簡単、短時間、高収入」、なかには「100万円の報酬」の文句が躍っていることからわかるように、お金に困った人たちをターゲットに誘っている。また「UD」(受け子・出し子)、「T」(叩き・強盗)などの隠語を用いて募集することもある。隠語を理解できるのは過去に犯罪を行った人たちで、その者たちへのアプローチも行っている。得てして闇バイトに手を染めてしまうのは、お金を稼ぎたいと思い、罪意識が希薄な人や社会経験がない人が多い。
闇バイトの実態を10年以上調査してきて、変遷を目の当たりにしている。以前は闇のネット掲示板で募集がなされて、メールアドレスや携帯番号で連絡を取る形だったが、今は多くの若者が目にするSNSに闇バイトの募集を行い、さらに、後からでもメッセージを消せるテレグラムの通信アプリを使うようになった。