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被害が多発した原因

 凶悪犯罪が深刻な闇バイト募集で起きている状況に、ようやく政府もその撲滅に力を入れる緊急対策プランを発表した。率直なところ、やっと国が動いたとの思いが強い。ルフィ事件の強盗犯らが次々に逮捕されていることからわかるように、実行犯らは捕まることが前提の捨て駒である。そのために、絶えず実行犯の人材不足に陥っており、毎日のようにSNSに闇バイトの募集がされているわけである。つまり特殊詐欺や強盗が頻発するのは、犯罪の入口の規制がほとんどなされてこなかったために、出口である高齢者などの被害が多発してきたのである。

 これまでは被害に遭わないための出口対策に重きをおいてきたが、SNS上の闇バイトの書き込みを削除するなど、犯罪未経験者が入り込む場をなくすための入口対策の重要性に気づいた形だ。

闇バイトの潮目が変わったのは2019年のアポ電強盗だった

 闇バイト募集の潮目が変わったと感じるのは、2019年のアポ電強盗が起きて以降である。アポ電とは、詐欺犯が事前に情報を探るためにかける電話のことだ。それを応用して高齢者が一人でいて、金庫があるなどの状況を電話で把握して後に、家に押し入り、刃物などで脅して、金庫をあけてお金を取ろうとするのがアポ電強盗である。

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 2019年にこの手口で、高齢者が亡くなっており、2023年にも同じ悲劇が起こり、闇バイトによる凶悪事件が再燃してしまった形だ。以前の闇バイトの募集はほとんどが「受け子」「出し子」といったものだったが、アポ電強盗以降、「叩き」(強盗)の仕事の話も出てくるようになった。

 ルフィ事件で、特筆すべきは強盗の指示をしたとされる今村磨人(きよと)被告らが、フィリピンの収容施設にいたという点だった。当時、「特殊詐欺が警察の摘発によって難しくなったから、強盗という手段に出た」との見解を話す人もいたが、疑義を抱いていた。なぜなら、特殊詐欺の被害は2022年度より増えていたからである。つまりうまくいっている特殊詐欺から強盗に鞍替えをする必要がないからである。