その後フィリピンの収容施設から国内の実行役に強盗の指示を出していたことが報じられ、強盗を行ったのは指示役らが詐欺電話をかけられないなか、手っ取り早く強盗行為をしようとした犯罪グループ側の事情だった。
犯罪と気づかせない巧妙な勧誘の手口
数々の調査電話をしてきてわかるのが、闇バイトの募集をするリクルーターは詐欺などを長くしてきた者が担当しているケースが多く、口が達者である。それゆえ若者などが簡単に籠絡されてしまう。リクルーターは、言葉巧みに「借金が幾らあるのか」を尋ね「明日の生活も大変だね」と同情しながら応募者の懐に入り込む。そして、通常の仕事の面接のように相手の免許証や学生証などを写真に撮って送らせる。逆に、突然声を荒らげて恫喝するのも得意で、相手の身元を押さえて断れない状況に追い込んで、犯行を繰り返しさせるのも常とう手段だ。グループによっては、犯罪と気づかせずに「荷物を運ぶ仕事」とだけ告げて、犯行の直前に詐欺や強盗、窃盗などを告げることもある。要は実行犯らをも騙すわけだ。つまり、気軽に連絡を取ること自体が危険であり、闇バイトは見ない、気にしない、連絡を取らないことが大事になる。
闇バイトには、他人に譲渡するために銀行口座の開設やスマートフォンの契約をさせたり、他人のクレジットカードを使って商品を買わせる「買い子」の募集もある。闇バイトで未成年だけでなく消防士などの公務員、84歳の高齢男性が受け子をして捕まったり、お金に困ったシングルマザーがお金を稼ごうとして、犯罪と気づかぬままに手を染めたケースもある。過去には大手の求人サイトに詐欺の受け子の募集が載っていたこともあり、闇バイトは私たちの身近に存在している。大事なことは、自分は引っかからないと思うのではなく、詐欺や強盗の犯罪の知識を日頃からもって、短時間で高収入の怪しい募集を見抜いて、絶対に連絡しないことだ。
◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2024年の論点100』に掲載されています。