――推薦文にある「その尊さを絶対に忘れてはならない人たち」というのは、どういう人のことを考えているんですか?
小泉 これは、実際に事件に関わっていた人たちはもちろんですけど、事件をすぐに忘れていってしまう人たち、最初は関心を持っていたけど時がたつと忘れてしまいがちな私たちみんなも含まれているという気がします。
そういう意味でもですね、漫画って、すごくとっつきやすいというか、理解しやすいじゃないですか。絵で私たちの想像力を補ってくれて、こういうことだったんだな、こういう感じだったんだなっていうのが伝わってきます。いろんな表現で訴えていくってすごくいいことだと思いました。
――魚戸おさむさん(漫画家)の画風もあるかもしれませんね。
小泉 そうそう、絵にすごい力があります。ちょっと笑っちゃったりするような会話をする2人の姿がかわいかったり楽しかったりもするから、いい夫婦だなっていう気持ちになりますしね。
「政治の話って言うけど、結局は自分の生活や人生の話」
……小泉今日子さんは、様々な政治的・社会的問題について自分の考えを発信することで知られている。3年前、時の安倍政権が、“官邸の守護神”とあだ名された黒川弘務東京高検検事長(当時)を検察トップの検事総長に据えようとして検察庁法改正案を提出したと批判された時のこと。小泉さんはTwitter(現・X)で反対の意思を繰り返し表明した。
その後、世論に反対意見が巻き起こって改正案は撤回に追い込まれたが、小泉さんは「政治的発言が多い」と反発も受けた。この漫画も森友事件という政治的事件を背景にした内容だ。批判を招くとわかっている発信をなぜ続けるのだろう?
小泉 なぜなんでしょうねえ。私、90年代に自分が作った曲を今ライブでやってるんですけど。当時25、6から30歳くらいで、オノ・ヨーコさんの『女性上位万歳』をカバーしてました。自分でもそういう歌詞を書いていたので、言いたいことを言うのは元々なんじゃないですかね。
今はSNSっていうものがあるから発信しやすくなったということでは。昔って音楽をやる人、音楽そのものの中に思想とかメッセージってすごくあったと思うんです。坂本龍一さんとか、忌野清志郎さんとか、みんなそうでしたよ。
政治の話って言うけど、結局は自分の生活や人生の話だと思うんです。それを発信しないのはおかしいと逆に思ってて。国民的な問題についての個人的な発言じゃないですか。
検察庁法改正案の時、大きなうねりになって若いアーティストの人も参加したけど、ばあっと叩かれて発言を消したりということがありました。若い人はそれでいいけど、私が消したら駄目だなって。ちゃんと立ってる大人も必要だという気がするから。自分に関わること、自分が感じることは普通に発言するのが普通のことだと思います。