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 それに続く若手たち、尾上松也、尾上右近、坂東巳之助、中村隼人、中村児太郎、中村梅枝、中村米吉といった人気花形の活躍ぶりも注目に値するし、近ごろは市川染五郎や市川團子のブレークにも目を見張るものがある。

今後の歌舞伎界は希望が持てるのか、それとも…

 そして私が大いに希望を持つのは、第4世代とも言える輝かしい少年俳優たち。

 まずは市川新之助が初舞台で、無謀とも思われた歌舞伎十八番『毛抜』の粂寺弾正を堂々と、まるで洒脱の意味を解しているかのように演じおおせて、成田屋の安泰を思わせてくれた。

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 それから尾上丑之助。父菊之助との『連獅子』や、『盛綱陣屋』小四郎の名演は頼もしかった。外祖父吉右衛門も天国でさぞ満足していることだろう。

 同じ音羽屋の尾上眞秀も、その初舞台で女方と岩見重太郎との二役をみごとに演じて観客の目を見張らせた。

若い世代が歌舞伎を未来につないでくれる

 また中村勘九郎・勘太郎親子の『連獅子』も立派だったし、次男の長三郎が叔父七之助と演じた『袖萩祭文(そではぎさいもん)』、盲目の母袖萩をいたわる娘お君の健気さには思わず泣かされた。

 歌舞伎の花道を含む大がかりな舞台機構、美しく立派な衣装、子供のころから芸ごとに精進を重ねた歌舞伎俳優、とりわけ女方という存在。こうした演劇は世界に類を見ない。

 若い世代が立派に歌舞伎を未来につないでくれると信じている。

◆このコラムは、政治、経済からスポーツや芸能まで、世の中の事象を幅広く網羅した『文藝春秋オピニオン 2024年の論点100』に掲載されています。