ひとりのアメリカ人としてこれからも
そんな偉大な女性を演じ終えてしばらく経っても、デッドワイラーの中で、この話は終わっていない。「#BlackLivesMatter」運動で黒人に対する暴力にあらためて脚光が当たったことも、それを思い出させる。
「この映画を作った時に感じたこと、思ったことを、これからも感じ、考え続けていきたい。私にも息子がいる。これはまだ続いている話なのよ。アフリカ系アメリカ人として、いえ、ひとりのアメリカ人として、私たちは変化のために力を合わせていかなければいけないの」
ダニエル・デッドワイラー
1982年生まれ。舞台でキャリアをスタートし、2012年にテレビ映画『A Cross to Bear』に出演。以降はドラマに多数出演し、21年の西部劇映画『ザ・ハーダー・ゼイ・フォール: 報復の荒野』で注目を浴びた。今作『ティル』ではゴッサム・インディペンデント映画賞の優秀主演女優賞を受賞し、BAFTA、批評家チョイス映画賞、映画俳優組合賞にノミネートされるなど、高く評価されている。
INTRODUCTION
1955年8月28日、アメリカ・ミシシッピ州マネーで、14歳の黒人少年のエメット・ティルが残虐に殺された。エメットの母・メイミーはこの陰惨な事件の実情を世界に知らせようと、変わり果てた息子の遺体をメディアに公開。アメリカ社会に衝撃が走った。結果、この「エメット・ティル殺害事件」はアフリカ系アメリカ人による公⺠権運動を⼤きく前進させるきっかけとなったのだ。近年のBLM(ブラック・ライヴズ・マター)運動の拡がりもあり、今回初めて事件が劇映画化される。
STORY
アメリカ北部イリノイ州シカゴ。空軍で唯一の黒人女性職員として働くメイミーは、14歳の息子エメットと平穏に暮らしていた。しかし、エメットが休暇で南部ミシシッピ州マネーの親戚宅に訪れた時、悲劇は起きた。エメットが飲食雑貨店で、白人女性キャロリンに向けて「口笛を吹いてみせた」ことが引き金となり、1955年8月28日、エメットは白人集団にさらわれ、壮絶なリンチを受けて殺された。母メイミーは、この冷酷非道な事件を世に知らしめるため、ある大胆な行動を起こす。彼女の姿は多くの黒人たちを勇気づけ、社会を変えていく。
STAFF&CAST
監督・脚本:シノニエ・チュクウ/出演:ダニエル・デッドワイラー、ウーピー・ゴールドバーグ、ジェイリン・ホールほか/2022年/130分/配給:パルコ/公開中