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 また、公判では「心神喪失」「黙秘権」「裁判官が胸をつかんできた」などの発言を繰り返し、何度か、裁判長に退廷を命じられた。精神鑑定をしたN医師によると、「被告人はASDのほかにも、拘禁反応に罹患している」としながらも、統合失調症の発症は否定した。また弁護人の接見に応じないことなどは、拘禁反応による拒絶だった、とした。そのためこの点についても、弁護人の主張を退けた。

「自己の行為の危険性がわからないほどの混乱状態」ではなかった

 男性従業員に対する殺意があったかどうかも争点の1つだった。この点について、男はAさんを殺害したあと、盗撮の通報を受けてホテルに駆けつけた男性従業員を先端の尖った包丁で、腹部を刺している。十分な殺傷能力がある包丁で、相当強い力で人の腹部を突き刺した。人が死ぬ危険性の高い行為であることは明らか、とした。

事件現場となったホテル Ⓒ文藝春秋/撮影・宮崎慎之輔

 しかも、包丁は被告の男が自ら購入し、その形状を認識していた。その上で、男性従業員が立っている位置関係を把握しつつ、突き刺す行為は、人が死ぬ危険性の高い行為と認識していた、としている。そのため、「自己の行為の危険性がわからないほどの混乱状態」ではなかったとして、弁護側の主張を退けた。

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 判決の日、男は白いワイシャツに紺のカーディガン、黒のズボン、緑の靴下を履いて出廷した。開廷前、普段よりも身振り・手振りが大きかった。新井裁判長が判決を言い渡そうとすると、被告の男は、証言台で「私は孫悟飯…心神喪失状態…病院で…正当な理由…スーパーサイヤ人…プログラム…」などと言い出した。しかし、判決に直接関係ないと判断したためか、新井裁判長は発言を制止した。

 証言台での発言の打ち切りは結審のときもされていた。最後の訴えを求められたときも、「私はオーディン…心神喪失状態…南海トラフ…3.11の被害者の~…東日本大震災、とんでもない…間違いなく、被害者が…アベンジャーズ、見てください」などと発言していたものの、不規則発言と判断したためか、新井裁判長から打ち切られていた。

 また、判決の読み上げの途中でも、「告訴します。控訴します」「名探偵コナン」「ドッペルゲンガー」などの不規則発言を繰り返した。新井裁判長はその度に、「発言すると判決が聞こえなくなりますよ」「発言しないで聞いてください」と制した。判決公判の傍聴席は、事件に関心を持つ人々でほぼ埋まっていた。