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男性恐怖で統合失調症に

 高校を卒業して、就職活動をした。高校の推薦でメガバンクに採用され、東京本店の窓口業務をするようになった。高卒の一般職女性は独身男性行員の嫁候補という扱いが当たり前の時代だった。入社早々、様々な男性行員が入れ代わり立ち代わり美智子さんに近づいてくる。

「銀行で今まで溜まってきたものが爆発して、完全に精神的におかしくなってしまいました。『彼氏いるの?』『デートしたい』『飲みに行こう』『エッチしたことあるの?』『俺の好みなんだ』とか……出社をすると、ひたすら男性に声をかけられる。ずっと虐待とか強姦とかそんな経験をしているので男性は怖いし、関わりたくない。ずっと我慢していたけど、1日中、次から次へと男性に話しかけられるので、本店の営業中に『もういやぁぁぁぁ~』『ぎゃぁぁぁぁ!』って絶叫しちゃったんです。そこで初めて精神科に行きました。精神分裂病(現在は統合失調症)と診断されて、銀行は2年もたないで辞めました」

 退職と同時に、悪夢しかない足立区の団地を出た。父親や叔父、鈴木教師に絶対に会わないように多摩地区のほうに引っ越した。地獄のような性加害を繰り返されたことで患った統合失調症が治ることはなかったが、薬を飲みながら、男性を避けながら、従業員が女性だけの環境の小さな会社で働いた。

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 美智子さんが初めて「子どもが欲しい」と思ったのは38歳のときだった。悪夢から20年以上は経っている。今だったら大丈夫かもしれないと思って結婚相談所に登録した。そして出会った男性と結ばれて、ひたすらDVを受けて離婚した。そして61歳になった現在、池袋の変態ママを頼って売春をはじめようとしている。 

「ママには『男性客はよく知っている男たちなので大丈夫。絶対に怖い思いをすることはないから安心して』って言われています。だから、あまり心配していません」 

 取材が終わり次第、この変態アジトに男性客がやってきて売春をするようだ。筆者は美智子さんに見送られて帰るとき、エレベーターの前で貧しそうな老人とすれ違った。老人は変態アジトの中に入っていった。