毒親とは、あらゆる手段で子どもの人生を支配し、悪影響を与える親のことだ。毒親は子どもの心と人生を破壊することも少なくない。貧困や生きづらさなどに苦しむ人は、「毒親育ち」であることも多いのだ。
ここでは、「毒親育ち」の女性の告白を綴ったノンフィクションライター・中村淳彦氏の著書『私、毒親に育てられました』(宝島社新書)より一部を抜粋。実父や教師から性的虐待を受け続けてきた美智子さん(仮名、61歳)の壮絶すぎる過去とは――。(全2回の1回目/2回目に続く)
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物心がついた頃から男による性的虐待を受け続けてきた
美智子さんは物心がついた頃から男による性的虐待を受け続けて、男の欲望に翻弄される人生を送ってきた。
「私、実の父親を筆頭に、いろいろ性的虐待を受けているんです。それで男の人がずっと苦手だったことが、結婚が遅れた原因。子どもが欲しいので無理して結婚したけど、やっぱりダメだった」
性的虐待とは、いったいなにをされたのだろうか。
売春や風俗、アダルトビデオ業界を取材していると、昔から一定数の性的虐待経験者が現れる。性的虐待の被害はダメージが大きい。なにをされたのか質問をしても、話したくないと拒絶する者、泣きながら語る者とそれぞれだが、美智子さんは表情をしかめた程度で、当時受けた被害を語りだした。
「男性に対しては嫌な思い出しかない。幼稚園の頃から近所のおじさんとか、近所のお兄さんに何度も悪戯されて、小学生になってからは父親。それと、先生。もう、次から次みたいな感じでメチャクチャでした」
離婚してから父親がおかしくなった
幼少期から性的虐待漬けだったという美智子さんが生まれ育ったのは、東京都足立区。すべての性的虐待は、その地域で受けている。
「子どもの頃はパパっ子でした。小学校のときは触られても、ほっぺにキスされても、性的な悪戯って感じじゃなかった。普通の優しいお父さん。父親がおかしくなったのは、私が小学2年生のときに離婚してから。父親が出ていったけど、離婚してから性的虐待がはじまった。両親の離婚理由は、子どもには全然わからない」
父親は普通のサラリーマンだった。父親が25歳のときに美智子さんが生まれている。様子がおかしくなったのは、父親が33歳、美智子さんが8歳のときだった。
「母親がいないときに、父親が家に来るようになった。いつも来るのは母親がパートに出てて、私が学校から帰ってきたばかりの15時とか。父親は笑顔で、子どもの頃みたいに抱っこしてほっぺにキスしたりとか。そんなスキンシップみたいな感じだったんだけど、ある日からだんだんとカラダを触られるようになった。パンツを脱がされたり、おっぱいを揉まれたりするようになったんです」