順調に給料が上昇する諸外国と比べて、日本の賃金は低迷を続けている。それだけにお金に関する悩みを抱える人は少なくないだろう。しかし、ライフネット生命創業者の出口治明氏は「お金の不安はじつは思い込み」なのだという。いったいどのような意味なのか。

 ここでは同氏の著書『働く君に伝えたい「お金」の教養』(ポプラ社)の一部を抜粋し、お金で「だまされる側」から脱出するための考えた方を紹介する。(全2回の1回目/続きを読む)

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お金の不安はじつは「思い込み」

 古今東西、儲けのタネは、ほんとうの価値を「知っている人」と「知らない人」のギャップのなかに潜んでいます。みなさんも「リテラシー」という言葉を聞いたことがあるでしょう。必要な知識を取り出して、上手に活用する力。簡単に言えば「ホントとウソを見極める能力」を指す言葉です。「ホントとウソを見極める」ためには、次の2つのステップが必要です。

(1) 政府や信頼できる民間の調査機関が集計・分析したデータ(数字・ファクト)を探す

 

(2) そのデータをもとにして、偏見を持たずにロジック(論理)を組み立てる

 この2つのステップを踏む習慣さえつければ、「だまされる側」から脱出することができます。

 みなさんが漠然とした不安を抱いているのは、まだ「お金リテラシー」が低い状態にあるからです。リテラシーの低い消費者がついついだまされてしまうのは、世界のあらゆる国々で、また歴史上のさまざまな場面のなかで証明されている事実。

 本来なら諸外国のように「お金リテラシー」を義務教育で教えるべきなのですが、悲しいかな、日本の教育ではお金について教えてくれる授業がありません。だから、考える基準がない。足し算や引き算の四則演算の基礎を教えてもらっていないようなものです。

 この本を通じて、「お金リテラシー」を身につけていただければと思います。

写真はイメージ ©️AFLO

日本は借金ばかり増えているけど大丈夫?

――僕たちに「お金リテラシー」がないのはおっしゃるとおりだと思います。でも、実際問題として日本は借金ばかりが膨らんでいますし、「財政が破綻して年金も払われなくなる」とメディアは警鐘を鳴らしています。お金持ちの人がやっているように、個人で資産運用をはじめたほうがいいのでしょうか。

「日本政府も年金もアテにできない」という意見を見て不安になった。政府がそんな状況で、どうやって将来の安心を手に入れればいいのか悩んでいる。そういうことですね。

 早速、ひとつの「不安への解」を示したいと思います。ただ、解を説明する前に、政府のお金の仕組みについて大前提を共有しておきましょう。