トヨタの高級SUV「ランドクルーザー」(以下、ランクル)の勢いが止まらない。2021年に発売された新型ランドクルーザー300は、予約段階から「納車4年待ち」とも言われるほど注文が殺到。新規の注文受付は停止され、現在も受注再開時期は未定となっている。

 そんな爆発的人気に伴い、ランクルの盗難被害も激増。2022年の「車名別盗難ランキング」では1位(日本損害保険協会調べ)になってしまった。実際に愛車を盗まれた人の悲しき体験談を紹介する。

※写真はイメージです ©iStock.com

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22歳でランクルプラドの購入を決意

 佐藤貴史さん(仮名・25歳)が運命のランドクルーザープラドに出会ったのは、いまから3年ほど前のことだった。プラドとはランクルの派生車種のひとつ。ランクルよりも一回り小さなボディで、オフロードと市街地、どちらの走行にも適した運転のしやすさが特徴だ。ファミリーカーとしての利用者も多く、幅広い世代から人気を集めている。

「購入の決め手は、完全に見た目でしたね。TXディーゼルの艶やかで高級感のあるボディに一目惚れして、絶対にこの車に乗りたいと思いました。当時はまだランクル人気に火がつき始めたばかりで、納車期間は3ヶ月と早いほうでした。それでもひたすら待ち遠しかったことを覚えています」

佐藤貴史さん(仮名・25歳)が所有していたランドクルーザープラド(佐藤さん提供)

 20代前半で高級SUVを即決購入できる人は、そう多くはないはずだ。普段はどのような仕事をしているのか。

「消防士です。ランクルは同僚たちにも人気で、乗っている先輩も多く、昔から憧れの車でした。初めて家族を乗せてドライブへ行った時の感動は、今でも忘れられません」

人生で一番高い買い物だった

 とはいえ、まだ社会人として駆け出しだった佐藤さんにとって、マイカーは大きすぎる買い物でもあった。

「購入価格は460万円。人生で一番高い買い物ですし、乗れる限りはずっと大事にしようと決めて思い切りました。購入後は日々の通勤に家族との休日、ほぼ毎日乗っていました。

 ランクルは『燃費が悪い』と言われますが僕が購入したプラドはディーゼル車だったのでコスパも良く、積載量も申し分なくて、趣味のスノボに行くにも大活躍。なにより自分の車に集まる周囲からの視線や、車高が高いので他の車を見下ろしながら走る優越感がたまりませんでした」

 値段は高くとも、それ以上の満足感を得られたという佐藤さん。そんな愛車との日々を楽しめたのも、束の間だった。