一方で、岩田リポートと朝日新聞を読み比べると素朴な疑問が浮かぶ。岩田リポでは安倍氏がキックバックの慣習に「激怒した」というが、安倍氏は本当にそれまで何も知らなかったのだろうか? 清和会では森喜朗会長時代からキックバックの慣習は始まっていたという報道が既にあるからだ。安倍氏は、もうヤバいからやめようという「提案」だった可能性はないのか?
事実、朝日新聞は提案と書いている。そうではなく岩田リポの通り安倍氏は初めて気づいて「激怒」したのか。提案か、激怒か、このニュアンスの差は大きい。書き手の表現次第で変わってくる可能性がある。とても興味がある。
安倍氏自身の政治とカネ問題
そもそも安倍氏自身の政治とカネ問題はどうだったのだろう? このお題も岩田氏に取材してほしい。桜を見る会では「前科」があるからだ(前夜祭の約3000万円の費用を政治資金報告書に不記載、公設第一秘書が略式起訴)。とにかくいろいろ気になることがある。これはもう岩田氏の第2、第3の「スクープ」に期待したいのである。
さて最後に「安倍派とパーティー」について、アエラ12月25日号で政治ジャーナリストの星浩氏が指摘していたのが印象的だった。この10年、安倍氏が中心に進めた政治について。
《アベノミクスによる金融緩和で大企業の業績を回復させた。大企業が多額のパーティー券を購入してきたのは、その「返礼」とも見える。また、安倍氏は集団的自衛権の容認を柱とする安全保障法制を、野党や憲法学者が反対する中で、強引に成立させた。それらの実行部隊となったのが最大派閥の安倍派だった。》
安倍派勢力の拡大と維持のために派閥パーティーの裏金が使われていたことは「明らかだ」と。なるほど、そうなると安倍派と裏金問題はこの10年の日本を動かしてきた政策がどこを向いていたのかとか、それを実現する手法の話にも帰結してくる。詳しい検証が必要なのではないだろうか? 田崎さん、岩田さん、頼りにしてます。