俳優の草刈正雄さん(71)は、NHK『ファミリーヒストリー』の収録スタジオで初めて、米兵だった父の写真と対面した。番組では「朝鮮戦争で死んだ」と聞かされ、顔も知らなかった父の半生や母との別れの顛末までが明かされた。その1カ月後、草刈さんは父方の親族に会うためにアメリカ・ノースカロライナ州へ旅立つ。

 一方、草刈さんの家族は『ファミリーヒストリー』をどのように観たのだろうか。かつては「家族と向き合っていたとは言い難かった」という父親としての後悔と、訪れた転機とは。(全3回の2回目/#3に続く)

草刈正雄さん

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アメリカ行きをためらった「割り切れない気持ち」

――草刈さんが伯母のジャニタさんらと初対面した様子が、『特別編』として12月29日に放送されます。「どうか どうか 私たちに会いに来てください」と綴られた97歳のジャニタさんからの手紙がアメリカ訪問を決心させたそうですが、その決断に迷いはなかったのでしょうか。

草刈正雄(以下、草刈) いや、迷いました。『ファミリーヒストリー』の収録が終わって楽屋に戻ったら、プロデューサーとディレクターの方たちがやってこられて「草刈さん、アメリカに行ってくれませんか」と言ってきたんです。

 僕としては「エッ、なにをしに行くんですか?」という感じでね。「いや、いまはお返事できません。ちょっと考えさせてください」ということで、後日、「行きましょう」とお返事して。

――8月放送の『ファミリーヒストリー』が収録されたのはいつ頃だったんでしょうか。

草刈 収録は2023年の6月30日で、ノースカロライナのグリーンズボロを訪れたのが7月13日です。その間は、なんとも割り切れない気持ちを抱きましたね。

 

――番組でも「割り切れない」と話していますね。

草刈 僕のおふくろも親父さんも、もう亡くなっていて、いない。そこでなにを話したらいいんだろうと。それでもアメリカに行ったのは、やっぱりジャニタさんからの手紙にあった「どうか どうか 私たちに会いに来てください」という言葉が大きいですよね。