俳優の草刈正雄さん(71)が出演したNHK『ファミリーヒストリー』(8月14日放送)では、シングルマザーだった母・スエ子さんから「朝鮮戦争で死んだ」と聞かされていた元米兵の父が実は長く存命し、2013年に亡くなっていたことが明かされた。
番組は大きな反響を呼び、「ギャラクシー賞」テレビ部門の月間賞を受賞。自身も初めて知ることばかりだったという番組の秘話と、草刈さんの率直な心境を伺った。(全3回の1回目/#2に続く)
◆ ◆ ◆
中学生時代に「お前の親父は生きてるぞ」と教えられた
――草刈さんの父ロバート・トーラー氏は、アメリカ空軍・第1航空郵便隊第24分遣隊の二等軍曹で、福岡の築城基地に配属されていました。お母様のスエ子さんは、「(父親は)朝鮮戦争で戦死した」と草刈さんに言い聞かせていましたが、ロバートさんは朝鮮戦争のさなかであった1950年に韓国・金浦空軍基地へ配属され、1951年1月に築城基地へ帰還しています。草刈さんは、お母様の言葉を疑ったことはなかったのでしょうか?
草刈正雄(以下、草刈) ずっと「そうなのか」とは思っていましたけど、中学生のときに伯父から「お前の親父は生きてるぞ」と突然教えられていたんですよ。僕が中学生だったから、1965年とか1966年あたりですかね。いきなりそう言われても、僕は「エッ?! ああ、そう」と答えるだけで。そこで話は終わってしまいましたけど、「ああ、生きてるのか」と。
――それを聞いて、スエ子さんに「生きていると教えられた」などと話すことはありましたか。
草刈 一切、しません。母には言わないほうがいい、言ってはいけない。そういう気持ちがあったんでしょうかね。
――当時、お父様が生きていることを知って、多少なりともうれしい気持ちを抱いたのでは。
草刈 どうなんだろう……うれしかったのかなあ。僕が東京に出るまでは福岡の小倉で育ち、もう、完全におふくろと僕だけの生活になってましたからね。親父っていう存在が、いまさら入り込む余地がなかったといいますか。まぁ、生まれたときから親父ってものがいないので。僕としては淡々としていたといいますか、あくまで受け止め方としては「生きてるのか。おふくろは置いていかれたんだ。なるほどな」といったぐらいのものでした。